SUPER GTでは、決勝スタート前に全車がグリッドに並んで最後の確認作業を行う時間がある。レース前の緊張感が高まる瞬間なのだが、その時にドライバーたちは何を考え、どのような準備をしているのか……。今回も8号車ARTA NSX-GTの福住仁嶺、55号車ARTA NSX GT3の佐藤蓮に聞いた。
マシンに乗る前の準備運動は欠かさない
決勝レースのスタートを迎える前、ドライバーたちの過ごし方は様々だ。他のチームのドライバーや関係者と談笑する人もいれば、スポンサーのゲストとの写真撮影に応じる人もいる。またポールポジションのチームはグリッドでテレビの取材を受ける場合がほとんどだ。
ただ、レース前ということは他の走行セッションと同様にマシンに乗る直前ということになる。佐藤蓮はいつもと変わらず“乗車前の準備運動”は欠かさないという。
「走行前は縄跳びをしたり、アミノ酸を採るといった準備はしています。これは決勝レースにおいても同じです」
現在はコロナ禍の影響もあり、専用チケットを購入したファンがグリッドに入場できる「グリッドウォーク」というイベントは実施されていない。そのためファンと交流する機会がない状態なのだが、佐藤蓮はサーキットに駆けつけてくれたファンのもとへ挨拶に行くことを心がけている。
「基本的にチームとの打ち合わせはグリッドに行く前の段階で終わらせているので、グリッド上ではお客様へのご挨拶に使えるようにしています」
実際に第3戦鈴鹿でも、ARTAファンシートの前に行き、手を振る姿があった佐藤蓮。ファンからの声援を受け取り、それをレースでの速さにつなげている。
決勝レースに向けた最後調整のチャンスがグリッドの時間
一方、8号車ARTA NSX-GTの福住仁嶺は、決勝レースが始まるまでの時間は“最後のマシン調整にあてられる時間”と捉えている。
「日曜日の朝は比較的ゆっくりできるんですけど、それでもエンジニアと話す機会は作っています。基本的に予選が終わった後に反省点や翌日に向けた対策などは、土曜日のうちにミーティングして、まとめておくのですが、日曜日になって気づくこともけっこうありますからね」
「あとは、レースの開始時刻が、お昼ご飯の時間に重なったりすることがあるので、早めに昼食をとるようにします」
そして、スタート前のグリッドはマシンの最終調整も佳境を迎え、ドライバーはもちろんのこと、マシンを囲むスタッフたちの緊張感も高まる。
「グリッドについてからは、一度ピットに戻ってお手洗いに行きますね。そこから時間があるので、レースのことを考えたり集中力を高める時間に使うのですが、早めにグリッドに戻って最終確認をするようにしています」
「直前の20分ウォームアップで感じたクルマのフィーリングをエンジニアと話さないといけないですし、グリッドについている時間でもクルマのアジャストができるので、そういった部分を話し合います」
今のSUPER GTでは、マシンの調整ひとつをとっても、ほんの些細なことが大きな差となり、それが結果に左右されることも多々ある。そのわずかな差を埋めるためにも、決勝前のグリッドは非常に重要な時間と言えるのだ。
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