2021年のSUPER GT。8号車 ARTA NSX-GTをドライブした野尻智紀にとっては、チャンピオンを獲得するために、自らがチームを引っ張り、奮闘した1年だった。
どん底に近いところから這い上がり、チャンピオン獲得圏内へ
野尻智紀は、2021年もSUPER GTに加えて、スーパーフォーミュラも主戦場のひとつとして戦い、こちらでは全7戦中3勝を挙げる活躍で初のシリーズチャンピオンに輝いた。
この勢いでSUPER GTもトップを狙っていたのだが、開幕戦から歯車がかみ合わず苦戦。第2戦富士、第5戦SUGOでは途中までレースをリードする快進撃を見せるも、様々な不運に見舞われポジションを大きく落としてしまった。
勝利の女神に見放されているかのような事ばかりが8号車を襲ったのだが、その中で野尻智紀は“次は必ず結果を出す”と前を向き続けていた。
それが形として現れ、第6戦オートポリス、第7戦もてぎと連勝を飾り、ランキング2番手で最終戦富士へ。スタートから力強い走りでライバルを追いかけたが、途中のピットストップでドアが外れるアクシデントに見舞われ、またしても後手を踏むレース後半となってしまった。
「ドアが外れるアクシデントで10秒~15秒ロスしていましたが、それを差し引いたとしても優勝はできなかったと思います。そう考えると、ピット作業でのアクシデントだけではなくて、単純に僕たちが勝てるだけの速さを出せなかったというのが、一番悔しいところです」
目の前まで迫っていた年間チャンピオンを獲得できず、レース後は悔しい表情をみせた野尻智紀。だが、ここでも“来年タイトルを獲るため”に強い気持ちを抱き続けていた。
「2020年のスーパーフォーミュラ最終戦でタイヤが外れてしまってリタイアになりました。あのまま走っていれば、僕は前の選手を抜いてチャンピオンだったと自分で思い込んで『自分は強くて速いんだ』という気持ちで、2021シーズンを戦ってきて、その結果チャンピオンになることができました」
「SUPER GTでも、それと同じだと思っています。最終戦でドアが外れるアクシデントがありましたが、それさえなければ、僕たちチャンピオンだったという“思い込み”も、来年に向けては大事だと思っています。だからこそ、チーム全員で底力をもっと作っていかないといけません。」
「最終戦は悔しい結果になりましたが、こういうレースを二度としないように、良い意味で思い込みを持って、来年につなげていきたいです」
2021年の苦労と経験を2022年への“自信”に
込み上げてくる悔しさを押し殺しながら、すぐ来年に向けて気持ちを切り替えていた野尻智紀。その中で、2021シーズンを経験して成功、失敗、苦労、経験は必ず役に立つと信じていた。
「どのチームにも絶対に何かしらの壁があると思っています。僕たちは今年その壁を乗り越えられたという自信があります」
「最終戦のことは非常に残念ですけど、2022年目指すべきタイトルに向かって突き進むだけだと思うので、シーズンオフからしっかりと進み続けたいなと思います」
そして、最終戦でチャンピオンをかけて争ったことで、野尻智紀は“王座をかけて争える位置にいる”ことの重要性を再確認していた。
「やっぱり最終戦でチャンピオン争いをしていないと面白みがないです。だから、そこを目指さないと意味がないというのを僕たちも再認識しましたし、チームのみんなもそう感じたと思います」
「チームのみんなが頑張ってくれて、最終戦でチャンピオン争いができたということは、すごく感謝しています。だからこそ、2022年獲りたいという想いは強くなっています。強い気持ちとポジティブな状態で、来シーズンの開幕にチーム全員が臨めると思います」
「またファンの皆さんに応援してもらえるような良い走りを、開幕戦から披露していきたいです」
まだ2021シーズンの余韻が冷めやらぬ状態ではあるが、野尻智紀の中では2022年の王座をかけた戦いは、すでに始まっている。
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