悩み抜いた1年。来季「内容はどうでもいい。とにかくチャンピオンを」|野尻智紀:2022シーズン振り返り | ARTA

2022.12.28

2022.12.28

悩み抜いた1年。来季「内容はどうでもいい。とにかくチャンピオンを」|野尻智紀:2022シーズン振り返り


スーパーフォーミュラで2年連続となるシリーズタイトルを獲得、今や“国内最強ドライバー”としての地位を確立しつつある野尻智紀。しかし、SUPER GTでは今シーズン苦戦を強いられた。

8号車ARTA NSX-GTは第2戦富士で優勝を飾るも、以降は上位に食い込むレースができずランキング12位。2020年に福住仁嶺とコンビを組んでからは2年続けてタイトル争いに絡んでいたが、今季は最終戦を前にタイトル戦線から脱落するなど、歯車の噛み合わないシーズンとなった。

ランキング12位という結果に終わった要因をひとつに限定することは難しい。全8戦で争われたシーズンでは、様々な出来事があったからだ。そんな中で野尻がひとつ指摘したのが、8号車が得意とする富士スピードウェイでのレースで大量得点を逃したことだ。

今季は第2戦、第4戦と2度の富士戦が組み込まれた。第2戦は上位陣の脱落もあってトップでチェッカーを受けることができたものの、レース中盤に発生した大クラッシュの影響でレース距離は大幅短縮、優勝した8号車の獲得ポイントは通常の20から半分の10にまで減らされた。そして第4戦はNSX-GT勢が苦戦する中で1台気を吐いたが、元来富士を得意とするGRスープラ勢、そして今季から投入された日産Z勢が上位を占めた結果、5位フィニッシュに終わった。

「8号車としては例年富士が調子良いかと思いますが、富士に関してはライバルメーカーも調子を上げてきていて、僕たちの調子の良いところでポイントを取りきれなかったところもあります」

「例えば17号車(Astemo NSX-GT)は鈴鹿が調子良くて、そこでしっかりポイントを取れていました。僕たちはなかなかランキング上位に行くきっかけがないまま終わってしまったので、そこは悔しいところですね」

ただ富士戦で思うようにポイントを積み重ねられなかったとはいえ、前半戦の8号車は4戦全てで入賞を記録しており、NSX-GTと比較的相性の良いSUGO、オートポリス、もてぎでのレースが控える後半4戦に向けては期待感が高まっていた。しかし実際には、レースウィークを通してマシンセットアップに頭を悩ませるレースが続いた。そこに不運やピットでのミスが重なったことが、第5戦以降の無得点の連鎖に拍車をかけていった。


「後半戦は、流れを掴めないというよりも、そもそも流れを作り出せないという部分が大きかったと思います。予選一発も速くなくて、決勝のペースも良くなくて、流れを作るきっかけすらもなかったんじゃないかと思います」

「自分たちが求めているようなクルマの動きにならないことが続いていました。何をやったらそこに感度が出るのかがいまいち理解できないままでした。そんな中でなぜか富士では自分たちの理想とする動きをしていたので、さらに頭を悩ませる印象でした。すごく難しかったと思います」


ホンダ陣営は今季からNSX Type Sをベースとした新モデルのNSX-GTを投入した。野尻曰く、開幕前テストの段階では一定の手応えを持っていたものが、シーズンが進むにつれて徐々にその感覚を失っていったという。

「毎戦トライはしたのですが、自分たちの壁を越えられなかったという思いが残っています」と語る野尻。悩み抜いたシーズンの総決算として臨んだ最終戦もてぎではまずまずの手応えを感じながらも、予選ではポール争いに加われず、決勝では1周目の接触で勝負権を失った。「できるところならもう1回レースがしたい」という野尻のコメントにその無念さが表れている。

この無念を晴らす手段はただひとつ。来シーズンに悲願のタイトルを獲得することだ。ARTA一筋で8シーズン、GT500の舞台で戦ってきた野尻だが、最高位は2021年のランキング2位で未だ頂点には手が届いていない。


「内容は正直どうでも良くて、とにかくチャンピオンを取りたいです」

「何回勝とうが……むしろ勝てなくてもチャンピオンならそれで構わないし、形とかやり方に囚われず、最後にチャンピオンに輝ければ一番幸せなことだと思っています」

「そのためにはひとつずつ積み重ねていく必要があると思うので、内容にはこだわりませんが、そこに至るまでのプロセスにはしっかりこだわって、チャンピオンを目指したいです」

その言葉の端々からも、タイトル獲得に向けた並々ならぬ思いが感じられる野尻。先日の体制発表で、来季は新たにスピードスターの大湯都史樹をチームメイトに迎え、ARTA8号車のドライバーとして9年目のシーズンを迎えることが明らかにされた。彼が国内二大カテゴリーのチャンピオントロフィーを両方揃えた暁には、文字通り日本レース界の“レジェンド”として歴史に名を刻むことになるだろう。



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