僅差で別れた“明”と“暗” | ARTA

2022.4.28

2022.4.28

僅差で別れた“明”と“暗”

4月16日、岡山国際サーキット。ARTAにとって、また新しいシーズンの挑戦が始まった。2022 AUTOBACS SUPER GTシリーズの開幕である。

GT500クラスに参戦する8号車ARTA NSX-GTは、2022年も野尻智紀と福住仁嶺のコンビ。昨年は、あと一歩のところでチャンピオン獲得ならず、今年はその雪辱を晴らすと、2人とも気合いが入っている。

ホンダ陣営はGT500車両をタイプS仕様のNSX-GTに変更し、シーズンも精力的に取り組んできた。その中で8号車は3月の岡山・富士の両公式テストで順調な走りをみせ、開幕戦での好結果獲得に期待が膨らんでいた。

0.081秒差で明暗分かれる……

土曜日の朝に行われた公式練習ではトップから0.376秒差の7番手につけた。ポジションとしてはGT500クラスの真ん中あたりだが、タイム差をみれば十分に上位を狙える状況だった。

「朝は感触的にあまり良くなくて、アンダーステアがキツい感じでした。そういったところがなかなか直りませんでした。それを踏まえて予選に向けて色々調整をしました」と語るのは、野尻智紀。少しうまくいっていない部分があったようだが、午後の公式予選に向けてはしっかりと修正ができた様子だった。

注目の公式予選。まずはQ2進出のために野尻智紀がマシンに乗り込み、タイムアタックに臨んだ。2022年はGT500クラスに15台がエントリーしているのだが、各チームのエースドライバーたちがQ1に集結した。特に今年は開幕前のテストから3メーカーとも実力が拮抗していると言われており、この予選Q1も0.001秒を削りあう壮絶なタイムアタック合戦となった。

野尻智紀が記録したタイムは1分17秒717。公式練習と比べて約0.8秒速くなっていたのだが、ライバルたちも好タイムを続々と記録し、最終的には10番手となった。

Q2進出ラインである8番手とは、わずか0.081秒。僅差での脱落だった。

「公式練習から比べると、予選に対してはポテンシャルが上がったのかなという印象でしたけど、僅差の中で落ちてしまいました。アタック自体は何か思い当たる節がないくらい、けっこうまとまっていた感じだったので……残念です」

「Q2に進出できていれば、もう少し前の方からスタートできていたのかなと思うと、何としてもQ1は突破しておきたかったです」

特にマシンの動きで違和感があったわけではなく、アタック中にミスをしたわけでもない。全力を尽くした走りだったにも関わらず、Q2に進出できない。野尻智紀は何とも言えない悔しい表情をみせていたが、決勝に向けて気持ちを切り替えていた。

「決勝に向けてポジティブな点でいうと、ロングランの確認もできていますし、その時の調子は良かった印象があります。決勝に向けての不安はなく、結構順位を上げていけるのではないかなという期待の方が大きいかなと思います」

昨年も予選で後方に下がってしまったが、それをリカバリーするだけの追い上げをみせた野尻智紀。その再現を、この時も狙っていた。

「チャンスはあると思っています。開幕なので色々起きると思うので、その辺を利用してうまく上がっていきたいです」

10位フィニッシュでポイント獲得も、上位進出は叶わず

日曜日も晴天に恵まれた岡山国際サーキット。決勝レース前には航空自衛隊のF-2戦闘機が歓迎フライトを披露した。ここ数年は新型コロナウイルスの影響で観客の入場に制限がかけられていたが、今年はそれがいくらか緩和され、グランドスタンドには開幕を楽しみにしていたレースファンで埋め尽くされた。

もちろん、今回もARTAファンシートを設置。オレンジ色のフラッグが何本も揺れていた。

10番グリッドからスタートとなる8号車。スタートドライバーは福住仁嶺が務めた。前日の予選では悔しい結果になった分、序盤から順位を上げようと気合十分でマシンに乗り込んだ。

岡山国際サーキットはコース幅が狭く、追い抜きをする機会も限られている。スタート直後の混戦で1つポジションを落としてしまった福住仁嶺は、挽回するべく前を走るライバルにプレッシャーをかけていったが、順位を上げるチャンスに恵まれず、レース中盤に突入した。

この状況を打破するべく、レースの3分の1を経過した29周目にピットインし野尻智紀に交代。まずはポイント圏内進出を目指したが、我慢の展開となった。

上位を走るライバルの脱落により、ひとつポジションを上げ、10位でフィニッシュ。1ポイントは獲得したものの、目指していた結果ではない。マシンの感触に関しては手応えがあった分、レース後のピットは“悔しさ”が漂っていた。

鈴木亜久里総監督も「クルマ自体も、テストの時からそんなに悪くなかったんですけど、ちょっと噛み合わなかったのかな……。予選で噛み合わないまま、その部分を引きずったまま、最後までいった感じでした」と険しい表情をみせた。

やはり予選で上位につけなかったことが、敗因のひとつとなった。これに対しては福住仁嶺も「特に最近のGT500車両はダウンフォースを出しているので、レースのように他のクルマが周りにたくさんいる状況だと、こう着状態が続いてしまいます。相当ペースが良くないと追い抜きが難しいなと思います」と語った。

「もちろん、予選結果も大事ですけど、もっと追い上げていけるようにならないといけないなと思っています。例えば、僕自身であれば走り方をもっと詰めていかないといけないですし、クルマ側でもやれることはまだあると思います。同じホンダNSX-GTでブリヂストンタイヤを履くチームと情報も共有しているので、そういったところを活かしていきたいです。とはいえ、僕たちなりの良いところは見つけていかないといけないです」と、勝利を目指して、もう一度改善が必要だと感じている様子の福住仁嶺だった。

レース後もドライバー・エンジニアが積極的にミーティングを行っていたのが印象に残る。

リベンジを果たしたい次回は5月3日・4日の富士スピードウェイが舞台となる。

Related Products

関連商品

シェア:

Related Article

関連記事