木村偉織、ほろ苦いデビュー戦。その中でも見えた“今後に向けたポジティブな要素” | ARTA

2022.4.29

2022.4.29

木村偉織、ほろ苦いデビュー戦。その中でも見えた“今後に向けたポジティブな要素”

2022年のAUTOBACS SUPER GTシリーズ第1戦岡山。GT300クラスに参戦する55号車ARTA NSX GT3は、シーズン初戦から入賞争いに加わる走りをみせるが、最後は非常に悔しい形でレースを終えることとなった。

新コンビで臨む2022シーズン

55号車は、2022年、ドライバーの体制を一新。アメリカのインディカーシリーズで活躍経験があり、国内では2020年までGT500クラスにレギュラー参戦していた武藤英紀が、ARTAに加わった。

武藤英紀は2011年のARTAでGT500クラスに参戦し戦った経験があるほか、2013年にはGT300クラスでシリーズチャンピオンも獲得している。チームにとっても頼もしい存在であることは間違いない。

もう1人のドライバーは、22歳の木村偉織。昨年はFIA-F4日本選手権でシリーズ3位を獲得し、将来有望な若手ドライバーの1人である。これまではカートやフォーミュラカーのレースが中心で、SUPER GTのようなツーリングカーレースに出るのは初めて。シーズンオフのテストでは限られた時間の中で、様々なことを学び、開幕戦に向けて準備を整えた。

この新コンビで、新たな挑戦が始まった。

予選で見えた“今の課題”

迎えた開幕戦の予選日。GT300クラスは全体を2組に分けてQ1を行い、各組上位8台がQ2に進出できる。55号車はA組に組み込まれた。

タイムアタック担当は武藤英紀。マシンに乗り込み、次の予選ラウンドであるQ2進出を目指し、ピットを後にした。

しっかりとタイヤを温めて、タイム計測に入ると、まずは1分25秒995をマークした武藤英紀。翌周もアタックを続け、最終的に1分25秒798のベストタイムを記録した。だが、Q2進出ラインに0.3秒届かず、A組12番手で敗退となった。

予選後も険しい表情でエンジニアたちとミーティングをしていた武藤英紀。予選一発目のパフォーマンスを大きな課題と捉えていた。

「一発の速さが課題ですね。予選のタイムを見ても、周りがけっこう上がっている感じなのですが、僕たちは今のところ昨年と比べても、あまり前進できていません。非常に大きな課題として捉えています」

土屋圭市エグゼクティブアドバイザーも「今年は2人とも新しいドライバーになって、昨年と比べて、どう変わったのか?が分からないから難しいところはある。でも、ずっとこのままの状態を続けるわけにもいかない」と状況を冷静に見極め、打開策を探ろうとしていた。

木村偉織、SUPER GTの難しさを経験する

日曜日の決勝レース。55号車はGT300クラス23番手からのスタートとなった。前日と同様に、まず武藤英紀が先にドライブし、途中で木村偉織に交代する作戦をとった。

ここでも序盤はライバルを上回るペースを発揮することができず、3周目にはポジションをひとつ上げたが、その後は集団の中で我慢のレース展開を強いられた。

25周目を過ぎて、上位のライバルがピットインし始めたことで、徐々に順位を上げていき、30周目にピットイン。木村偉織がマシンに乗り込んだ。

後半も、こう着状態が続くかと思われたが、レース後半になって周囲に隙ができ始めたところを狙って、ポジションを上げていった。

レース残り20周を切ると、上位でアクシデント等もあり、フルコースイエローが導入されるなど、荒れた展開を見せ始めた。そこを狙っていたというわけではないが、木村偉織は少ないチャンスを確実に見つけていき、前を走るマシンを追い抜いていく。

気がつけばポイント圏内まで浮上し、5番手争いの集団に加わると、木村偉織は積極的に仕掛けにいき、70周目は8番手に浮上。このままいけば、トップ5でのゴールも現実みを帯びてきたが……その勢いが、最後の最後で裏目に出てしまった。

71周目のバックストレートで、前のマシンに追突してしまった。55号車はフロントボンネットが脱落してしまったが、走行は続行。そのままポイント圏内でチェッカーを受けたが、相手に追突してコースオフさせたとして、レース後に90秒加算のペナルティが出され、最終結果は15位となった。

「武藤さんが、すごく懸命な追い上げをしてくださって、自分がバトンを受け取りました。最初のピットアウトした周は、初めてで難しいところもありましたが、そこから少しずつ順位をあげていきました。ブリヂストンタイヤの特性上、ロングランが強いということは分かっていたので、FCYの前後をうまく活かして、ポジションを順調に上げていって、ポイント圏内まで入ったところで、追突をしてしまいました」

そう語る木村偉織だが、終わってからにはなるが、その時の状況を冷静に分析し、自身が反省するとともに、経験として次に活かそうとしていた。

「あの時は、僕自身もブレーキングが少し遅かったというのもありますし、SUPER GTは異なるタイヤメーカーが参戦しているので、それぞれタイヤ特性が違えば、ブレーキングポイントも変わってきます。そもそも、向こうのタイヤが苦しい状態になっていれば、ブレーキングも早くなって当然です」

「もちろん、追突した自分が悪いんですけど、向こうも苦しい状況の中でフルプッシュしていて、そこでの“差”みたいなものもありましたし、接近戦をしていると、フロントのダウンフォースが抜けてブレーキも止まりにくくなるということもありました」

「僕自身、気持ちが焦っていたかどうかと……正直、そういう感じではなかったです。しっかりとクルマを無事に持って帰ろうという気持ちで走っていました。その中で、ちょっとした差で今回のインシデントが発生してしまいました。今回の反省を活かして、もっと良いバトルができるように、順位を上げられるように、頑張っていきたいと思います」

「本当はポール・トゥ・ウィンで勝ちたかったですけど、逆に、こういう集団のなかでレースができて、GTカーでは、どういう戦い方をすれば良いのか?を経験できました。それは、すごくポジティブに捉えて、次のレースに活かしたいと思います」

55号車にとっては、結果だけを見ると理想とは異なる形でのシーズンスタートとなってしまったが、内容面では23番手からポイント圏内まで追い上げることができた。これは間違いなく、今後に向けてプラスに捉えられる要素だ。あとは、武藤英紀が語った通り予選でのパフォーマンスの改善や、細かなミスやアクシデントを起こさないということが目下の課題となるだろう。

次回の第2戦富士では、GT500クラスの8号車ARTA NSX-GTと同様に、雪辱を晴らす快走を期待したい。

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