2021.5.21

両クラスを経験した福住仁嶺が語る“GT500マシンとGT300マシン”の違い

SUPER GTでは、GT500・GT300と2つのクラスが存在し、決勝レースでは両クラスが同時にレースをする。ARTAは今年も両クラスに参戦している。

さらに使用するマシンも、ベースとなっているのはホンダのNSXで、一見すると、そこまで大きな違いはないように見えるが、実際にマシンをドライブした時の感覚はどれくらい異なるものなのか？　両マシンでレース経験のある福住仁嶺に、その違いを聞いてみた。

GT500とGT300の違い

まずはGT500クラスと、GT300クラスの違いについて見ていこう。

GT500クラスは、今年もホンダ、トヨタ、日産が定めた技術規定に沿って製作した、いわば“SUPER GT専用マシン”で争われる。そのため外観は市販車に似ているものの、中身は全くの別物。特に現行規定では中核となる「モノコック」と呼ばれる部分をはじめ、多くの部品が指定された「共通パーツ」というものを使用しなければならず、エンジンの搭載位置も決まっている。

このため市販車のホンダNSXは運転席の真後ろにエンジンがある「ミッドシップ」と呼ばれるレイアウトになっているのだが、GT500車両では規定に準拠するため運転席の前方にエンジンが搭載されている。

一方、GT300クラスは細かな車両規定が複数存在するものの、基本的には市販車をベースにレース用に改造した車両が用いられる。そのためエンジンの搭載位置も車種によってバラバラであるほか、車体のサイズなども違いがある。そうすると、車種によって性能差が出てくるため、各大会で性能調整（BoP）を実施し、より均一な状態にしてレースが行われる。

GT300は市販車に近い感覚、車種による差も大きい

では、2つの異なるクラスの車両を乗った時の感触やレースでの戦い方はどれくらい違うのか？　福住に質問すると「全く違いますね！」と即答だった。

「GT300はザックリいうと、市販車から進化したクルマという感じなので、車体自体が重たいというのが特徴です。GT500と比べると、GT300は一般車に乗っているような感じです」

そう答えた福住。多種多彩な車両が出ていることもあり、各大会で車種ごとの相性や、勢力図もガラリと変わることがあるという。

「GT300の方は、調子の良い時と悪い時の差がはっきり出ると思います。ABSなどの電子制御装置がついているので、コースとかコンディションなどによって、調子の良い悪いという差は、GT300の方が大きく出るのかなと思います」

「あとBoP（性能調整）とかタイヤメーカーの差など、色々な兼ね合いがあって、時には調子が良く速さを発揮できるレースもある一方で、厳しいレースになる時もあります。その差もハッキリしていますね」

「だから、GT300の時は調子が良い時にちゃんと結果を残すことが重要です。また調子が良くなるタイミングも、めちゃくちゃ大事だなと感じています」

GT500はフォーミュラカーに近い感覚。車種による差も少ない

これに対して、専用設計となっているGT500マシンはどうなのだろうか。

「GT500はフォーミュラカーみたいな感じで、スピードも出ます。だから、走らせ方は（GT300とは）全く違って、走行ラインやブレーキを踏むポイント、縁石の使い方なんかも変わってきます」

「あと、シーズンが始まるたびにゼロからスタートしていくという感じで、特に2020年は新車でのスタートでクルマを熟成させていく感じでした。中身に関しても共通パーツが多いのが特徴です。ストレートの差だとか、ダウンフォース量の差は（メーカーごとで）あると思うんですけど、2020年に関しては全車がイコールな状態だったのかなと思います」

「僕の経験の中でいうと、GT500クラスの方が、よりイコールコンディションに近いという印象ですね」

そう答えた福住。マシンの特徴差はGT300と比べて少ないようだが、その分ドライバーの腕であったり、チームの総合力といった部分が、勝敗を左右する重要な要素となってくるという。