ARTAファミリーの中では、欠かすことのできないドライバーのひとりとなっている高木真一だが、2020シーズンは自身のレースキャリアで初めてと言って良いほどの大クラッシュを喫し、怪我の治療のためSUPER GTの終盤2戦を欠場することとなった。
その当時は、腰椎と右手を骨折する重傷だったが、シーズンオフの間に順調に回復し、2021年3月のSUPER GT公式テスト岡山には元気な姿でパドックに登場し、55号車ARTA NSX GT3のテスト走行を担当し、シーズン開幕に向けて精力的に準備を進めていた。
クラッシュによる怪我を経験し、さらに体力面に気を遣うように
「もうピンピンしていて、テストも普通にこなせています!」
岡山国際サーキットでの公式テスト1日目を終え、そう語った高木。昨年の最終戦富士にもリハビリ中ではあるもののサーキットに姿を見せた時は、普通に座ることが困難など、怪我の影響がまだ残っている様子だった。しかし、今では通常通り不自由はないとのこと。むしろ、怪我をする前よりコンディションは良いという。
「怪我をしたことで、体の部分でケアとか、より余力を持たなければいけないなと思うようになりました。なので、いつもよりトレーニングの量を増やしています。なので、持久力的な部分でいうと、(怪我をする前より)ちょっと上がっている感じはします」
「ハードに筋肉をつけることは負担がかかってしまうので、それよりも持久力をしっかりとつける方が良いのかなと今は考えています。GT300はブレーキを踏む踏力がちゃんとあれば、あとは持久力とか暑さに耐えられるようにするとか、そういった部分が重要になってくるのかなと思っています」
「今まで以上に、トレーニングの量や食べるものにも気をつけています。それもあってか、今まで以上に体調はすごくいいです」
新パートナーの佐藤蓮にも期待
今シーズン、高木はSUPER GTルーキーの佐藤蓮と組んでGT300クラスに挑む。ここ数年はホンダ期待の若手ドライバーの面倒を任されることが多いのが、実質的な初テストとなった岡山での公式テスト1日目の動きを見て、心配事はほとんどない様子だ。
「(佐藤)蓮に関しては全然問題ないと思っています。(福住)仁嶺や大湯(都史樹)の時もそうですけど、ホンダが育ててきて、色んなところで揉まれたドライバーです。ハコ車が初めてだとしても、すぐに乗りこなしています」
「それが当たり前になり始めていますけど、色んなシミュレーターだったり、映像を勉強したりしています。それにイメージを作って、実際に乗った時にパッとそれができるか……僕のタイムが基準タイムとして、それと同じか、上回れば満足がいくじゃないですか。蓮もすぐに同レベルのところに来てくれたので、“やっぱり速いな”という印象です」
これまではフォーミュラカーのレース主体で活動してきた佐藤にとって、SUPER GTマシンのような、いわゆる“ハコ車”に乗るのは初めて。それでも、このNSX GT3の特性が、彼がいち早く乗りこなすことができる助けになっていると、高木は言う。
「ハコ車ではあるんですけど、NSX GT3はミッドシップなので、ちょっとフォーミュラっぽいところもあるので、そこに関しては乗りやすいと言っていました。そういう意味でも、NSX GT3のミッドシップカーというのはフォーミュラカーばかりやってきたドライバーでも、すぐに対応できるクルマでもあるのかなと思います」
いざ2021シーズンに向けて……「調子が良くない時にどうするか?」
岡山、富士での公式テストを経て、いよいよ4月からシーズン開幕を迎える高木。狙うは2019年以来のシリーズチャンピオンだ。
それを実現するために、シーズン中で重要になってくる要素は? この問いに対し、高木はこう答えた。
「僕もSUPER GTで何年もやってきましたが、勝てる時ってクルマの調子も良いし、流れも良いです。でも、実際には大半のレースがそうではないです。そういう調子が今ひとつな状態でも、ドライバーの力でクルマを上位にもっていけるか……。そこにドライバーの価値はあると思います。そこを今年も2人で協力し合いながら、それぞれの条件下で最高の順位で戻ってくれば、絶対に最終的にはチャンピオン争いができるのかなと思います」
「サクセスウェイトもありますし、時には我慢をしなければいけないレースも出てきます。無理をしないようにポイントをしっかりと獲っていく……本当にこれが大事だと思うし、目標としている順位以上の結果を得られれば、それはすごく価値になると思います」
2019年のように、サクセスウェイトが多くなって、上位入賞が難しいレースでも、しっかりとポイントを獲得して次に繋げる……。高木はこれを、ルーキーの佐藤とともに再現していきたいと考えている。彼にとって、また新たな挑戦に立ち向かっていくシーズンとなりそうだ。
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