昨年の悔しさを忘れず、さらに強く……福住仁嶺、初戦からの活躍を誓う | ARTA

2021.3.13

2021.3.13

昨年の悔しさを忘れず、さらに強く……福住仁嶺、初戦からの活躍を誓う

2021シーズンも8号車ARTA NSX-GTをドライブする福住仁嶺。彼にとっては昨年は悔しさの残るシーズンとなった。

2019年にARTAからSUPER GTデビューを果たし、高木真一とともに55号車ARTA NSX GT3からGT300クラスに参戦。これまではフォーミュラカーのレースをメインに戦ってきたため、SUPER GTのようなツーリングカーレースは初めてだったが、開幕戦から2位表彰台を獲得するなど、安定した活躍を見せ、参戦初年度でGT300チャンピオンを勝ち取った。

その成績が評価され、2020年はGT500クラスへステップアップ。野尻智紀のパートナーとして8号車に加入した。

GT500へのステップアップ

「SUPER GTは特殊なレースで、色々な要素が絡んでいきます。その点ではGT300を1年戦わせてもらって、GT300の人たちがどういうことを考えてレースをしているのかという経験ができたので、(昨年は)レースに対しての難しく感じることはなかったと思います」

しかし、GT500は各メーカーのマシンの差も少なく、国内トップドライバーが集結しているハイレベルなクラス。ライバルに競り勝つために、マシンのセッティングからドライビングにかけて、よりシビアなものが要求される。特に福住の場合は、初めて経験するGT500車両ということもあり、最初は戸惑うこともあったという。

「開幕前のテストの段階では、自分の思ったように走れていないなというのを感じがありましたし、うまく走れていたとしてもタイムがあまり良くないということがありました。でも、データなどもちゃんとチェックして、野尻選手やエンジニアさんともしっかり話し合って、シーズンが始まったら、しっかりと速さは出せたかなと思います。走り方に関しては、だいぶスムーズに慣れることはできました」

「GT500となるとクルマも全然違いますし、セットアップの方向性だったりとか、相方とのクルマの好みの差がある中で、たまにどっちかが相手の好みに合わせないといけない時もあります。そこで、お互いがどこまで話し合って合わせ込んでいけるかというのを経験することができました」

福住は、シーズン序盤から周りも注目するパフォーマンスをみせた。特に予選では開幕戦のQ1でトップタイムを記録したほか、第5戦富士、第6戦鈴鹿ではQ2トップタイムを叩き出して、ポールポジションを勝ち取った。

決勝でいかに強く戦えるか

しかし、決勝ではトップの座を守ることができず、悔しいレースが続く。福住も決勝でいかに強く戦えるかを意識するようになったという。

「チームとしてはポールポジションを3回獲ったんですけど、レースではうまくいかないことが続きました。途中から、予選よりも決勝で強いチームやクルマにしないといけないなと思いましたね。予選も重要ですけど、決勝でしっかりと前でゴールできることが、もっともっと大事なんだなというのを感じました」

「でも、その流れを良くするタイミングもあって、第7戦もてぎで優勝するこができました。1年を通して悔しい結果も多かったですけど、その分得るものも多かったです。こういった経験をしたからこそ、今年はもっと良いレースができるんじゃないかなと思います」

決勝での力強さが存分に発揮された8号車は、第7戦もてぎで優勝。これがGT500クラス初勝利となった福住は、これまでの不安やプレッシャーから解き放たれパルクフェルメで大粒の涙を流した。

しかし、シーズンを終えた福住の心の中に残ったものは“悔しい”という心境だった。

「(第7戦もてぎで)優勝した段階では、ホッとした気持ちもありました。そこからチャンピオン争いに絡めて、NSX勢の中でトップにならなければいけないというプレッシャーもあった中で……やっぱり最終戦が終わったあとは、僕はものすごく悔しかったですし、そこから長い時間に渡って、落ち込みました」

「チームの皆さんは最終戦に関して11番手スタートから5位でフィニッシュすることができて、悪くない結果だったと言ってくれるんですけど……僕自身はチャンピオン以外は負けと同じだと思っていたので、めちゃくちゃ悔しかったですね」

SUPER GTと並行して参戦しているスーパーフォーミュラでも、チームメイトがシリーズチャンピオンを獲得した一方、福住はあと一歩のところで勝利を逃すレースが続いた。終わってみると、レース人生の中で一番と言っても良いほどの悔しさを味わったシーズンとなった。

しかし、ただ“悔しい”だけで終わるのではなく、この経験を力に変えて、2021年を成功の年にするべく、準備を進めている。

「(レース人生の中で)今までも悔しいと思うことはありましたけど、ここまで悔しいと思うことはなかったです」

「それを良いきっかけに、この悔しさを忘れないようにしています。その上で自分にもっと出来ることはないか、自分に足りないものは何なのかを見つけていきながら『どういうすれば結果が出るのか?』というのを、このシーズンオフの間にめちゃくちゃ考えていました」

2021年は“速さ”よりも“強さ”

そして迎える2021シーズン。すでにテスト走行も始まっているが、あの悔しさを二度と味わわないために、チームとともに準備を進めている。

「GTに関しては何が課題で、どうすれば良くなるかというのも見えてきていますが、正直いうと……このままいったら昨シーズンのような感じになるんじゃないかなと思っている部分もあります。まだテストが残っているので、最終的にどうなるかわかりませんが、今の段階だともっと詰めないといけないのかなという印象が大きいですね」

「でも、そこは昨年の経験がすごく活きていて、何をどう変えたら良くなるのかというのを、着実に見つけて、それを改善しようという強い絆みたいなものが、チームの中で強くあります。みんなすごい前向きでレース本番に向けて、順調に準備を進められているのかなと思います」

開幕に向けて急ピッチで準備を進めているチーム。そこにあるのは“また勝ちたい!”という強い気持ちだと、福住は語る。

「チームの皆さんと一緒に仕事をしていて“みんながまた優勝したいんだな”という気持ちが伝わってくるほど、細かいところまで作業してくれています。野尻選手も細かいところまでチームに伝えてくれています。苦しい時はあるかもしれないですけど、その打開策は確実に見えていて、良くなってきていると思います」

「SUPER GTは毎戦が本当に大事で、少しずつでも着実にポイントを稼いでいくのが大切だということを昨シーズン痛感しました。今、足りないものというのは“速さ”よりも“強さ”だと思うので、チームを強くするために自分もコミュニケーションをもっととっていかないといけないナと思っています」

「チームを引っ張っていく立場でもあるので、みんなで“チャンピオンを獲るぞ”という強い思いを持って毎戦レースをして、最終戦に向かっていきたいです。何回勝つとかは考えていなくて、毎戦強いレースができれば、結果がついてくると思います。そういうチームに今年できるように頑張っていきたいです」

2月には結婚を発表し、人生の新たな1ページを刻むことになる福住仁嶺。周囲の環境変化なども力に変えて、昨年のリベンジのシーズンを果たすことができるか……勝負の1年が、いよいよ始まろうとしている。

Related Products

関連商品

シェア:

Related Article

関連記事