SUPER GTのレース中で、一番緊張する瞬間のひとつ。それが「ピットストップ」だ。
このレースでは、レギュレーションにより、1人のドライバーで最初から最後まで走り切ることは許されていない他、ゴールまで走り切るためには途中の燃料補給も必要。そのため、レース中に最低一度はドライバー交代を伴うピットストップを行う必要がある。
基本的に、ピットストップで行う作業は3つ。「タイヤ交換」「ガソリン給油」「ドライバー交代」なのだが、SUPER GTでは厳格なルールが設定されている。
作業が許されるのは、腕章をつけ耐火装備などレギュレーションに準じた条件を満たした7名のスタッフのみ。このうちタイヤ交換に従事できるのは2名まで、タイヤの着脱時に使用する「インパクトレンチ」も2つまでと決められている。
さらにタイヤ交換と給油は同時に行ってはいけないほか、ドライバー交代時に補助できるメカニックの人数も上限があるなど、細かなルールが設定され、違反していた場合はペナルティと対象となってしまう。
しかも、ピットストップというのはライバル車がコース上を走っている“レース中”に行う。もちろん、時間は待ってなどくれない……。ひとつのミスが、そのままレースの結果に直結してしまうことも少なくないのだ。
特にSUPER GTでは給油とタイヤ交換を別々に行うため、わずかなミスがタイムロスにつながり、コース復帰のタイミングが遅れてしまう。現在のSUPER GTは、コース上で差をつけるのがかなり難しくなっているため、万が一ピットストップで失敗をして順位を落としてしまうと、そこから挽回するのはかなり困難となる。
そうならないために、ARTAのメカニックたちは、日々トレーニングを欠かさず、大会期間中もピットストップの練習を怠らない。
ドライバーもメカニックに負担がかけないように、事前に目印がつけられた停止位置にピタリと停車、ジャッキアップ、タイヤ交換、給油、ドライバー交代。そしてジャッキダウン後にGOサインを出す時も、ピットレーン上の安全確認をして、ドライバーに指示を出し、再びコースに送り出す……。
それらの作業を何度も繰り返し、頭と体に叩き込んでいく。本番でうまく決まれば、逆にライバルを逆転できるチャンスも生まれてくる。
今のSUPER GTにおいて、ピットストップというのは“勝敗を大きく左右する超重要な要素”となっているのだ。