2021.12.16

2021.12.16

繊細さと穏やかさが覚醒のカギ|2021年“野尻智紀の今”

2021年のスーパーGTでポイントランキング2位、そしてスーパーフォーミュラではシリーズチャンピオンを獲得するなど、2021年まさに覚醒した野尻智紀。その強さの秘密に加え、休日の過ごし方やトレーニングなど、レーシングドライバー野尻智紀の普段はなかなか見られない素顔に迫る。

家族との時間とこだわり過ぎない食事

時に300km/hを超えるスーパーGTは、まさに一瞬の判断が勝敗を大きく左右する。そのため、ドライバーはレースを走り抜く体力に加え、常に高い集中力を維持しなければならない。まさに心身ともに蓄積される疲労を、野尻智紀はどのように癒しているのだろうか。

「完全オフの日は、家族と過ごしていることが多いです。娘を公園に連れて行ったり遊んだりもしますよ」

オーラを纏ったレース中の姿とは違い、穏やかな笑顔で語る姿は実に印象的だ。

また、着る服に困るというほど細身の野尻智紀だが、日々のトレーニングや体系維持では、どんなことに気を付けているのだろうか。

「トレーニングは基本的に、ランニングと筋トレが中心です。ランニングは自宅の近所を10kmくらい走りますが、特にコースとかは決めていません。」

「筋トレはプロのトレーナーの方についてもらって、筋量や筋力を増やすというよりも、持久力を意識しています。トレーニングの頻度は特に決めていなくて、やれるときにやるという感じです。」

レースがモータースポーツと言われるように、レーシングドライバーはまさにアスリート。身体を作る食事は、どんな点に注意しているのかについて聞いてみた。

「意外に思われるかもしれませんが、それほど食事は管理していません。レース後、身体・精神共に疲労が溜まった時には、夜中にコンビニのパスタやチルドのラーメンを食べることもあります。もちろんジャンクフードばかり食べているわけではないですが。(笑)」

責任感が強く、勝ちに対して誰よりも強いこだわりを見せ、ときにチームメイトやライバルから、“几帳面”と言われることも少なくない。その反面、適度に肩の力の抜けた時間を過ごすことで、オンとオフのバランスを取っているのだろう。

強さの源は自身の経験と周囲の力

2021年シーズン、パートナーの福住仁嶺と共にスーパーGT GT500クラスでチャンピオン争いを繰り広げた。さらに、スーパーフォーミュラではシリーズチャンピオンを獲得し、2021年もっとも注目を集めたドライバーの一人だ。

その覚醒ぶりは、鈴木亜久里総監督や土屋圭市エグゼクティブアドバイザーに、「野尻は強くなった」と言わしめる。そんな活躍ぶりについて、野尻智紀本人はどう思っているのだろうか。

「2020年シーズンで感じた悔しさが原動力になった部分はありますが、自分では特定の要因は無いと思っています。レースは自分だけの力だけで勝てるものじゃないので、チームはもちろん、スポンサーやファン、家族など僕のレース活動に関わっているすべての方の力は欠かせません」

「クルマのセットアップやレースの組み立て方は、経験による部分があるかもしれません。ですが、それだけではレースに勝つことはできませんからね。自分の経験とみんなの力がうまく噛み合い結果に繋がっているんだと思います」

繊細さを強さに変えた2021年シーズン

決しておごることなく、穏やかにそう話してくれた野尻だが、サーキットで見せる高い集中力は関係者のあいだでも有名。走っているときだけではなくマシンから降りているときにも、 “繊細なセンサー”のごとくさまざまな出来事や状況を感じ取る。その繊細さは、もともとの性格なのだろうか。

「細かなことを気にするタチであることは自覚しています。レースだけに限らず、日常生活の中でもいろんなことが気になってしまうんです。それこそ、家族とどこかに出かけたときや、自家用車を運転しているときも(笑)」

「気にしているというか、一番避けたいのは、自分が原因で他人に迷惑を掛けることですね。他人に迷惑を掛けるくらいなら、自分が一歩引くこと、無理をしない方を選択することも少なくありません」

あくまでもそんな話を聞いたうえの仮定でしかないが、「迷惑を掛けてはいけない」というある種遠慮のような感覚が、レースにおいて無意識に働いていた可能性がある。2021年野尻智紀の覚醒は、そんな感覚を克服した証なのかもしれない。

もう一歩届かなかった悔しさをバネに来シーズンへ向かう

この話を聞いたのは、まだ真夏のような暑さの残る10月。安定した強さを見せていたスーパーフォーミュラに対し、スーパーGTでは思うような結果が出せず、チームとしてもやや悩んでいたころだ。

「今はとにかく話し合う時間が大切だと思います。何が正解かは分からないけど、気になるところを洗い出して、少しずつでも修正していきたいですね」

レース後のコメントでも「自分にできることがもっとあったかもしれない」と語る野尻智紀。スーパーGTでチームが勝つために何ができるのか。レーシングドライバーとして速く走ることはもちろん、自分がチームを引っ張っていくという責任感を強く感じているのが良く分かる。

2021年、ARTA 8号車はポイントランキング2位。最終戦直後、「来年はタイトルを狙えるように取り組んでいきたい」とコメントした野尻智紀の活躍に、今後も注目していただきたい。

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