2020.8.7

2020.8.7

2020 ARTA DIGITAL Rd.1 FUJI GT500

FLY AGAINST THE HEAD WIND「悲願のタイトルへ」

新型コロナウイルスの影響を受けて延期されていた2020年のスーパーGTが、7月の富士でいよいよ開幕の時を迎えた。
GT500クラスを戦う8号車の新しいARTA NSX-GTはエンジンがフロントへと移動し、昨年GT300クラスのチャンピオンとなった福住仁嶺が昇格し野尻智紀とタッグを組む。予選では徐々に乾いていくコンディションでウエットタイヤを履いたが、路面が予想以上に乾いていったためドライタイヤ勢に及ばず22番グリッドからのスタートになってしまった。しかし8号車はQ1で福住がコースレコードを記録、Q2でも野尻が0.1秒差の2位を獲得した。
レースエンジニアには経験豊富なライアン・ディングルを迎え、真新しいコンビでのシーズンスタートとなった。

ディングル「フォーメーションラップは1周だけ。
なので熱はちゃんと入れて。特にフロント」
福住「これで次に帰ってくるときにはもうスタートってことだよね?」
ディングル「基本的にはそうです。頑張ってね」
福住「ありがとうございます、頑張ります!」

流暢な日本語で送り出された福住は、スタートで前の37号車に並びかけていった。抜くまでには至らなかったものの、GT500デビュー戦で果敢な姿勢を見せた。

後方では高速の100Rでクラッシュがあり、
早速セーフティカーが導入された。
ディングル「SC、SC」
福住「了解、デカいねこれは」
ディングル「デカそうだね。12号車と64号車が100Rでクラッシュした」
福住「了解、これが長引いてくれた方が良いね」

ディングル「はい。あとはデブリに気をつけて。後ろが100号車に代わりました。その後ろは36号車」
5周目にレースが再開されるがトップのマシンについていくことは難しく、福住は後ろからのプレッシャー受ける。富士スピードウェイというストレートが長く特殊なサーキットでは、決勝になってGR スープラ勢が速さを見せてきた。
なんとかポジションを守る福住だったが、11周目に1台に抜かれ。17周目にはさらに抜かれて5位までポジションを落としてしまった。
福住「うわぁ〜、クソッ!」
ディングル「大丈夫だよ、大丈夫。このポジションをキープできるように頑張って。あと11周」

柔らかめのタイヤをチョイスしたことが原因でペースが伸び悩んでいると判断したディングルは、福住にフィーリングを確認したうえで早めのピットインを決断した。
ディングル「今のラップタイムは悪くないんだけど、フィーリングはどう? もうちょっと行けそう?」
福住「このまま走って前に追い付けるなら行っても良いと思うけど、今は結構限界かな」
ディングル「了解です、トップの37号車のラップタイムは31秒0。100号車がバトル中で31秒7。仁嶺と似たようなラップタイム。仁嶺、あと2周。プッシュ、プッシュ!」

福住から8号車のステアリングを受け継いだ野尻は、第1スティントの結果を受けて硬めのタイヤに履き替えて10番手でコースへ戻り、他車がピットインを終えると5番手から前走車を追いかけていく。
ディングル「野尻、このペースがキープできれば良いよ。残り周回数は半分」
野尻「了解」
ディングル「後ろは14号車、ギャップ2.3。ペースはほぼ一緒」
38周目に停止車両が出て再びセーフティカー。これで前後のギャップがリセットされた。
野尻は一部のパーツがグラついていたことでドライビングに集中できず、ペースが伸びなかったと報告した。
野尻「最初の数周すいません、ヘルメット・ダクトがブラブラしていて集中できなくて」
ディングル「大丈夫、ここでリセットされるから頑張りましょう」
野尻「了解、ここで切り替えられると思うんで頑張ります」
ディングル「ちなみに今タイヤのフィーリングはどう?」
野尻「ちょっとピックアップがあるかな。そんなに無理ができる感じではないね。フロント内圧はちょっと高いと思う」
ディングル「これから路面温度が下がり始めると内圧が下がるし、タイヤも保つようになると思います」

野尻「了解。あと何周?」
ディングル「SCが3周くらい走りそうだから、あと24〜25周になると思う。前の2台はウチよりペースが速いけど、その前の36号車はウチと同じペース。後ろの坪井君はちょっと速かったけど、その後ろに脅威はない」
レースは42周目に再開。
しかし8号車のセッティングは予選では速かったものの決勝のロングランでは厳しく、徐々に前から離されていってしまった。

ここからは無線でのコミュニケーションは最低限に絞り、野尻はドライビングに集中する。だがポジションを3つ落として8位でフィニッシュするのがやっとだった。

予選でポールポジションを争う速さを見せたARTAにとっては、不満の残る結果になってしまった。
ピットでレースを見守っていた鈴木亜久里監督も苦しい胸の内を明かしながらも、年間を通した戦いへと目を向けている。ARTAの究極の目標は、悲願のタイトル獲得だからだ。

「胃が痛くなるようなレースだったね。久しぶりのレースだったので、何とか良い結果を出したいと思っていたし、テストの結果からすると良い結果につなげられると思っていたからね。しかし、ロングランのセットアップに課題があったようで、次回までに改善しなければならないね。
チャンピオンシップを考えるとポイントも獲れたし、悪くない順位だと思うので、次回は上位でフィニッシュ出来るように頑張ります」イレギュラーなシーズンはこのあと、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎで次々とレースが行なわれていく。悲願のタイトルへ。決して順風満帆のスタートではないが、その逆風を押し切って前に進む力の片鱗は見せた。激動の2020年シーズンの頂点を目指すには、まさにそんな力が必要になるはずだ。

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