2021.11.22

2021.11.22

一般道での運転にも役に立つ? SUPER GTドライバーに聞く“混走での技”

SUPER GTではGT500とGT300という、異なる2つのクラスが同時にレースをするというのが最大の特徴だ。

時にはコース幅の狭いコースで、GT500クラスはGT300クラスのマシンをかき分けながら、一方のGT300クラスは背後から迫るGT500クラスの車両を気にしながら、それぞれ同じクラスのライバルと順位を争う。

混走時にドライバーが意識していることとは何なのか? 今回は8号車ARTA NSX-GTの野尻智紀と55号車ARTA NSX GT3の高木真一に話を聞いた。

GT500目線からみた“混走”「いかに自分の存在を相手に気づいてもらえるか」〜野尻智紀〜

まずは、GT500クラスの目線で、野尻智紀に混走時に気をつけていることを聞いた。

「GT500目線でいうと、GT300で走っている選手がこっちに気づいているか。あとはコーナーが連続していた場合、その人が僕をどっちから抜かさせようとしているのか。そこを見極めるのが、すごく難しいポイントですね」

「個人的に気をつけているのが、一般道でもそうだと思うんですけど、相手のミラーに映りやすいところに自分がいてあげるようにしています。不慮の事故というか、そういうものがなるべく起きないように心がけています」

一般の乗用車にもある“死角”。これがきっかけとなり、一般道でもヒヤリとした経験を持つ人は少なくないはずだ。実はレースにおいても、この死角に入ってしまうことで相手に気づかずにアクシデントにつながってしまうケースもある。野尻智紀はそれを避けるために、自分の存在が常に相手に分かってもらいやすいような位置どりを心がけている。

「クルマってどうしても死角があるじゃないですか。そこには入らないようにしたいなと思っていますね。あとは、追い抜く時も『自分がここにいますよ、寄ってこないでくださいね』というふうに、相手に意思を伝えるような走り方をしたりする時もあります。そこは相手も尊重しないといけないので、バランスをとりながら、彼らの迷惑にならないようにしないといけません」

GT300クラスから見た“混走”「バックミラーを見る割合は50%以上」〜高木真一〜

一方、GT300クラスはどうだろうか。こちらはSUPER GTでの参戦歴が非常に豊富な高木真一が答えてくれた。

「レースが始まって最初の数周はそれぞれのクラスでの戦いになりますが、混走が始まりそうなタイミングで『GT500のトップがくるよ』とか、無線で連絡があります」

「同じクラスとのバトルでもバックミラーはチェックしていますが、GT500との混走が始まると、後ろを見る頻度は格段に上がります。多分、全体の50%以上はバックミラーを見て、後ろを気にしながら走っています」

GT300クラスの場合は、GT500クラスに道を譲る形になるため、場合によっては大幅にペースが落ちてしまうこともある。それを最小限に食い止めるテクニックも必要なのだが、それ以上にアクシデントに巻き込まれないことを一番に考えて走っていると、高木真一は語る。

「GT500がストレートで抜いてくれたら、タイムロスも少なくでいけるんですけど、どうしてもコーナー区間で抜かれたりすると、こっちが辛くなってしまう部分があります。なるべくそうならないようにはしているんですが、お互いにレースをしているので、そこは仕方ないです。その辺は……運任せですね。とにかくぶつけられないようにすることを意識しながら走ります」

「自分がぶつけてしまうのは、以ての外ですが、相手にぶつけられてしまってもリザルトは残りません。ぶつけられた時も“自分が悪い”と思いながら走っています。自分が相手(抜く側)の気持ちとかシチュエーションを読み取れなかったことによって、ぶつけられてしまう……最終的にはそこに行きつくと思いますし、そうならないように常に心がけています」

ライバル車両には誰が乗っているのか? 周囲のドライバー情報も逐一チェック

こうして、GT500とGT300それぞれで混走への対処の仕方に違いがあるのだが、その中でも2人が共通して“チェックしている”と話したことがあった。周りを走っている車両に、誰が乗っているか?ということだ。

「無理矢理抜いてくるドライバーもいれば、一歩引いてタイミングの良いところで抜いてくれるドライバーもいます。アプローチの仕方が個々で違うので、その車種とかドライバーによって走り方を変えるというのはすごくあります」

「その辺はレース後に映像をチェックして『この人は少し強引にいくタイプだな』とか、そういうのも確認しています。比較的、昔から常連で乗っているGT500のドライバーとかは、走りの雰囲気で大体わかるんですけど、若いドライバーが最近はどんどん入ってきていて、彼らがどういう動きをするのかは、すごく注意をしながら見ていますし、事前にスタートドライバーが誰なのか、GT300でも自分の周りにいるドライバーは誰かというのは、念入りにチェックしています」(高木真一)

「GT500になるとGT300の選手のキャラクターも気にして走らないといけません。僕たちのことも気にして走ってくれている選手なのかどうかですね。そこは分からない部分ですし、同じ人でも状況が違えば、また違った走りをすることがあります。その辺がすごく難しいです」

「だからGT300クラスも通して誰がスタートドライバーで、今誰が乗っているかを把握するようにしています」(野尻智紀)

GT500に譲る時に欠かすことができない“ウインカー”

SUPER GTのマシンには一般の乗用車と同様、左右にウインカーが付いており、必要に応じて出す場合もある。

「SUPER GTで使われているウインカーは、一般道でのルールと同じです。『自分は左に避けるから右から抜いていってください』という場合は、左にウインカーを出します。ただ、ホンダNSX GT3の場合は、ウインカーがセンターコンソールにあって、使用する時は目線を逸らすことになってしまうから、レース中ではなかなか使えないんですよね……」

ウインカーについて、そう説明してくれた高木真一。バトル中などウインカーを出す余裕がない時は、このような形で意思表示をしている。

「基本的にコーナーで並んで入っていくとお互いタイムロスにつながります。なので、このコーナーでGT500を前に行かせたい時は、ブレーキングポイントよりも少し手前のところからアクセルを戻して、GT500車両の真後ろについてコーナーを曲がるようにします。今はGT300の車両の中にはABSがついているものもあるので、ブレーキングポイントもGT300の方が奥(よりコーナーに近いギリギリのところ)だったりするので、その辺のバランスも見ながらやっています」

「あとは、特にGT500の若いドライバーとかは必死に追い抜こうとしますが、タイミングによっては僕がイン側をわざと締めて『今ここで無理に抜くと2人ともタイムをロスしてしまうから、今は待とう』という意思表示をしたりすることもありますね」

混走で気をつけていることは、一般道での運転にも通ずるところがある

このように、SUPER GTで毎回見られる混走について、2人のドライバーに話を聞いてきたが、ここでの考え方は、一般道で交通量が多い複数車線を走る時にも応用できるという。

「これは一般道でも通ずるところがあると思います。合流の時とかも『そこにいたら、危ないことになるでしょ』と思う場面に遭遇することもあります。そういう時は自分の存在を周りの人に教えてあげるという動きをするのは、サーキットでもそうですし、一般道でも安全に繋がる部分になると思います。そういう意味で、僕もレースではGT300と当たってレースを終えるということがないように常に気をつけて走っていますね」(野尻智紀)

0.001秒を争って勝利を目指すためには攻めの走りをする必要があるときもあるのだが、“混走”という要素が絡むSUPER GTでは、“後方を含め周りをよく見る”、“自分がどこへ行きたいのかを動き(ウインカーなど)でしっかりと意思表示をする”、“無理をしない”ということが、勝利につながる重要な要素となるのだ。

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