前回の第2戦富士から2ヶ月半のインターバルを経て、ツインリンクもてぎで行われた第4戦。今シーズンとしては3戦目となるのだが、鈴鹿大会が8月に延期されたことに伴い、先に第4戦もてぎが行われることとなった。
SUPER GT GT500クラスに参戦する8号車ARTA NSX-GTは、第2戦富士でトップ争いに加わる強さを見せながらも、終盤のペナルティで順位を落とす悔しい結果となってしまった。
今回の舞台となるツインリンクもてぎは、昨年11月に優勝を飾ったARTAにとって相性の良い地。ライバルと比べるとサクセスウェイトも比較的軽く、8号車にとっては優勝を狙える絶好のチャンスだった。
そのチャンスを確実なものにするべく、積極的な動きを見せたのが、野尻智紀だ。
2ヶ月半ぶりのSUPER GT。金曜搬入日にみた“勝利への決意”
搬入日となる金曜日は、チームとのミーティングに時間を費やすことが多いのだが、この日はパートナーの福住仁嶺や8号車担当のエンジニアを連れてコースの下見に出た。実際の走行ラインをなぞるように歩きながら福住とコースの注意点などを話し、時にはコース脇に立つポールなども確認していた。
夕方には、メカニックたちがピット作業の練習をしているところに加わり、自らマシンに乗り込むシーンもあった。もてぎのピットは他のコースと比べて比較的狭い。特に混雑時に使用するダイブポジションで作業しなければならないシーンを想定して、どうすればスムーズに作業を終えられるかをメカニックとともに確認していた。
並々ならぬ想いを今回のレースにかけている、ということを、走行前の段階から感じていた。
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予期せぬ問題が発生。土曜日の公式予選はまさかのQ1ノックアウト
しかし、いざ土曜日の公式練習を迎えてみると、マシンの感触が思ったような方向に進んでいかない。午後の予選に向けて様々な対策を講じるも、大きな改善には至らず。Q1は野尻がアタックを担当するも、0.272秒届かず、9番手でノックアウトされる結果となった。
「正直、今回の結果は予想していないものだったので、いつも以上に悔しさはあります。まずは明日のことよりも、今回なぜダメだったのかというのをしっかりと振り返って答えをしっかり出さないといけないなというのと、決勝では切り替えて追い上げていかなければいけないですね」
そう語るのは、Q2担当予定だった福住。結局、この日は予選が終わってしばらく時間が経っても、原因究明のための話し合いが続いていた。
怒涛の追い上げをみせ今季ベストリザルトを掴むも……
予選での結果を受けて、日曜日の決勝レースではマシンを大幅に見直して、スターティンググリッドについた。
今回は前半を福住、後半を野尻が担当する作戦を採用した。ここツインリンクもてぎは、追い抜くポイントが少なく、GT300との混走状態にならないとポジションを上げるチャンスが見出せない。
福住は、前のマシンに接近しつつも、仕掛けに行くことがなかなかできず、我慢のレース展開を強いられた。
そんな中、比較的早めとなる23周目にピットストップを敢行。野尻がマシンに乗り込んだ。この早めのピットインが功を奏したのか、ライバルが後半スティントに入り始めた頃には6番手まで浮上した。さらに野尻は、ここから快進撃を見せていく。
まずは前を走るホンダNSX-GTの1台に照準を合わせ、果敢に攻め込んでいく。直接追い抜くことはできなかったが、野尻の容赦ないプレッシャーに屈したのか、ライバルはバトルで逃げる中でGT300と接触してしまいコースオフ。これで5番手を手にすることになった。
この時点で4番手の車両との差は10秒近い差があったが、野尻は49周目に1分42秒213、50周目には1分42秒107と、チームベストのタイムを次々と更新していく勢いで、追い上げを開始した。
そして、残り3周というところで、4番手の車両に1秒後方まで迫ったが、そこから逆転することはできずチェッカーフラッグ。チームとしては今季ベストとなる5位入賞を果たした。
しかし、レースを終えてマシンを降りた野尻に、笑顔はなかった。
「予選日はマシンの感触が変わってしまっていて『なぜこうなってしまったんだろう?』と分からない感じでした。決勝ではなんとなく合わせ込めて、それなりの速さはみせることができたのかなと思います。」
「でも、今回は勝ちに来たレースですから……。そこでライバルに獲られたということは、まだまだ僕たちに甘いところがあるのかもしれません」
「今週末はどんなに小さな見落としもないようにということを心がけて、やってきました。でも、予期しないことも今週は多々起きてしまっていました。その辺はまだまだなのかなと思いました」
「全体をみても、ペースはそこそこ良かったと思います。昨年まではこういう追い上げるレースはできていなかったと思うので、その辺は調子が良くない中でもポイントを獲れるだけ獲るというのは重要なのかもしれません」
「ただ、今回は勝ちに来たレースで、これではダメなので、そこはみんなでしっかりと反省しなきゃいけないです」
「簡単じゃないですけど、僕がもっともっとチームを鼓舞し続けて、みんなでレベルアップできればいいかなと思いますし、シーズン終盤の大きな山場に向けて、しっかりと作り上げていかないといけないなと思います」
勝つためにレースをやっている以上、今回の結果は満足できるものではない。だが、今シーズンは5大会残っており、チャンスはまだある。次こそは最高の結果を掴むために……8号車の挑戦は続く。
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