2021.5.11

2021.5.11

勝利を掴むために、もっと強くならなければ……

2021年のSUPER GT第2戦。GT500クラス8位でフィニッシュした8号車ARTA NSX-GTだが、マシンを降りた福住仁嶺は悔しさのあまり、その場で泣き崩れた。

予選でトップとは0.003秒差の2番グリッドを獲得し、序盤からトップ争いに加わった8号車。これまでレースペースの部分で課題を抱えていたのだが、予選と決勝でマシンのセットアップを大きく変えるなど、対策を施してきたことが功を奏し、長距離レースでも最後までペースが落ちない力強い走りをみせた。

残り30周を切ったところで、トップに浮上。手強いライバルたちが後方から迫ってはきていたが、これを守りきれば今季初優勝となる。誰もがそう感じ始めていた瞬間だった。

チェッカーまで残り20周を切ったところのコカ・コーラーコーナーで1台がストップした。これにより2コーナーからコカ・コーラコーナーまでの区間でイエローフラッグが振られ追い越し禁止の対応が取られたのだが、福住はここでGT300車両を追い越してしまったのだ。

もちろんペナルティの対象となり、チェッカーまで残り10周ちょっとというところでドライブスルーペナルティが通達……。ポジション後退を余儀なくされ、最終的に8位でレースを終えた。

終始ライバルに劣らないような力強い走りをみせていたが、ひとつでも歯車が狂ってしまうだけで、優勝のチャンスが遠のいてしまう。それだけ、今のSUPER GTでは勝つのが難しい。それを、改めて痛感させられた1戦だった。

序盤から力強い走りをみせるも……

「1コーナーを曲がって、GT300の車両がアウト側に避けてくれて、僕はイン側から抜いていこうとしました。ただ(イエローフラッグが振られていた)2コーナーのマーシャルポストはだいぶ向こうの方にあって、内側にいた僕からは、うまく見えなかったです」

今回の対象となった2コーナーは下りながら右に緩やかに曲がっていく。坂の上にあるコカ・コーラコーナーに向かっていくため、基本的に進行方向の右側に意識が集中しがち。それに対し、マーシャルポストは反対側の左側にあり、コースからも少し離れた場所に位置している。さらに直前の17号車とのバトルで接触があり、マシンのコントロールにも支障が出ていた。後方から迫り来るライバルに注意を払いながら、接触の影響でバランスが変わってしまったマシンを必死でコントロールしていた。

その他にも、挙げれば切りがないほどの“不運”があったのだが、福住は一切言い訳をせず、悔しい気持ちを必死に抑えて事実を受け止めようとしていた。

「僕自身、今回のレースではたくさんミスもありましたし、タイミング的にうまく行かなかったりとか、少しずつタイムを稼げたところもいっぱいあったはずです。正直、あの場所にいてしまった流れを、長いレースの間に作ってしまったと思いますし、あそこで何かしら対策できたこともあったかもしれません」

「『見えなかった』とはいえ……あの場所にいる以上は僕のミスです」

不運だったとはいえ、ペナルティを受けてしまったことは事実。頭では分かってはいるもの、福住自身がそれを受け入れるのは、そう簡単なことではなかった。

「福住選手だけの問題ではない」

昨年もポールポジションからスタートしながら、その優位を活かすことができず、悔しい結果に終わることも少なくなかった8号車。さらに福住個人のことで言えば、この前週に行われたスーパーフォーミュラ第2戦でポールポジションを獲得し、スタートから後続を引き離す圧倒的な速さを披露し、彼の優勝を誰もが信じて疑わなかった。しかし、レース前半に不運なトラブルに見舞われ、レースリタイアを余儀なくされたのだ。

そして、今回もゴールまであと少しというところで、勝利がその手からこぼれ落ちてしまった……。

ヘルメットを被ったまま、力なくピットへと戻る福住。そんな彼を出迎えたのが、パートナーの野尻智紀だった。

「最終的な結果はこうなってしまいましたが、それも自分達の足りない部分で、福住選手だけの問題ではないです。彼がもっと集中してプッシュ出来るような環境を作る事をチームとしても考えていかなくてはならないと思います」(野尻)

確かにイエローフラッグ区間で追い越しをしてしまったのは福住だったのだが、彼を責めるのではなく、どうすればあの状況を回避できたか。チーム全体で問題解決に取り組んでいかなければならないと考え、すぐにチームメンバーと話し合いを始めるなど、行動に移していた。

勝つために必要な強さを手に入れるために……

レースを終えて、しばらくは控え室で悔し涙を流していた福住だが、1時間後にはその涙を拭き“次こそ勝つために”チームとミーティングを開始。メディアの取材にも、きちんと対応していた。

状況的に言い訳をしようと思えばいくらでもできるし、誰かのせいにしようと思えばできる。それこそ、すぐにサーキットを離れて“今回は不運だった、仕方がなかった”と忘れてしまうことだって、できる……。

でも、そんなことをしても、勝つために必要な“本当の強さ”が手に入るわけではない。

「チーム全体でどうやったら強くなれるのか、というのをより一層考えることができたと思いますし、新たに気づくことができた1日でした。本当にうまく噛み合わないと、レースで優勝できないと思います」

「その点で僕たちは、本当に小さな積み重ねというのがまだ出来ていないと思うし、レースって、コンマ何秒を争う世界なので、そこが重要になってきます。また……洗礼を受けたなと感じたレースでした」

福住は体の中から湧き出てくる悔しさを必死に抑え込み、次のレースに向けて前を向こうとしていた。

もっと強くなるため。そして、今度こそ優勝を掴みとるために……。

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