2021.3.7

2021.3.7

今度は自分がチームを引っ張っていく番……野尻智紀、“真のエース”として迎える2021年

2015年にARTAからSUPER GTのGT500クラス参戦を開始し、早くも今年で7年目を迎える野尻智紀。2020年は福住仁嶺とともにシーズンを戦ったのだが、彼にとっては新たな発見があった。

8号車ARTA NSX-GTは、開幕前のテストで好タイムを連発し、開幕戦でも2番グリッドを獲得。間違いなく優勝候補の筆頭になるかと思われたが、決勝では一転して苦戦を強いられて8位でフィニッシュ。第2戦以降もアクシデントなど不運に見舞われたことも多かったが、予選一発での速さに比べて、決勝レースで劣勢になる展開が見られた。

野尻によると、その兆候はテストの段階からあったという。

「開幕前は、すごく調子が良いように見られていたと思いますが、ドライブしている僕と福住選手の間では『このままだと決勝レースが大変になりそうだな』ということを感じていました。結果以上に僕たちは危機感を覚えながらテストを進めていました」

「シーズンが始まってみると、夏直前の開幕ということもあり、テストと比較しバランス変化が大きく、厳しい戦いが続きました。」

「正直、新しい車両ということや初のFR車両ということもあり、ドライバー・チームともに手探りな部分がありました。自分が感じたネガティブな要素は、タイム自体は良かったこともあり当初は車両の持つ個性だと考えていましたが、今考えてみると、僕が感じている問題点をチームに伝えるべきでした」

野尻にとって、パートナーのドライバーが変わるのはこれが初めてではなかった。今までの唯一違った点は、一緒に組むドライバーが年下であり、キャリアで見ても野尻の方が経験豊富であるということ。これまでは、先輩ドライバーたちが担ってきた“チームを引っ張る”という役割を、今度は野尻自身が務めなければいけない立場となったのだ。

「何かしら問題があっても、実際に乗っていてクルマのフィーリングが分かるのは僕たちドライバーだけです。昨年の状況を振り返ると、もっと強く意見を言わなければいけなかったなと思いました」

「結局は、誰かが言わなければいけないですからね。福住選手はGT500クラス1年目で、(フィーリングなどを)感じとることはできても、立場的にそういうことを彼に課すというのは間違いだと思うし、僕がもっとしっかりしていれば……というところはありました」

「それが、中盤戦まで結果に結びつかなかったところに大きく影響してしまったかなと思います。チームを引っ張っていくという部分でのやり方などを、すごく勉強させられましたね」

自分が引っ張っていかなければ、何も変わらない……

前半戦からセットアップのリクエストは、チームに対して伝えていた野尻が、より確実な変化を求めて、あえてチームに対して強く意見したり、要求するなど、方法を工夫していった。

「(中盤戦に入ってから)僕たちドライバーの意見を押し通すような形で進めた部分もありました。それだとクルマのパフォーマンスが下がるという意見もありましたけど、そういうことも言っていられない状況でした」

「難しい局面ではあったと思うんですけど、自分たちのやっていることは間違いじゃないということが、結果に繋がっているのかなと思います」

そこから、少しずつではあるが8号車の決勝でのパフォーマンスが改善していった。第5戦富士、第6戦鈴鹿で3位表彰台を獲得すると、第7戦もてぎでは展開にも恵まれ、ライバルに対して46秒もの大差をつけて、念願の優勝を飾ったのだ。

最終的にチャンピオンには手が届かず、ランキング5位で終わってしまい、野尻自身としては悔しさ残るシーズンとはなったが、確実に“2021シーズンに向けた手応え”を掴んでいるのは確かな様子。特にもてぎでの初優勝は、ドライバーのみならず、ARTAに関わる全てのスタッフにとって前向きになるものだと捉えている。

「僕はずっとこのチームに長く在籍していますけど、(第7戦もてぎは)福住選手にとっても、エンジニアのライアンさんも初優勝でした。色んな立場の人が、もてぎでの勝利が初優勝だったという方もいます。そういった意味で、『優勝ってこんな素晴らしいものなんだ』というのをみんなで分かち合えたのが、ひとつ良かったのかなとと思います」

「(シーズンの結果は)個人的には喜ばしいことではないですが、少なくとも色々な経験をしていって、どういうふうにしていったら自分たちのパフォーマンスが出しやすいかとか、チームとしてうまく進んでいくのかとか、その辺を考えることができたシーズンでした」

「それを今年につなげていかなければいけないので、ここからが一番大変ですね……でも、間違いなく自分の選手としての力は上がっていると思うので、昨年乗り越えたものが今年もっともっと生きてくると思うので、そういったことを踏まえると楽しみですね」

エースとして、チームをどう引っ張っていかなければならないのか……

新たな壁にぶち当たり、それを乗り越えようとしている野尻。その勢いで、2021シーズンはシーズン序盤からチームを引っ張る立場になりたいと、決意は固まっている。

「みんなチャンピオンを獲りたくてレースをやっていると思います。でも、最終的にそれを引き寄せるのは“ほんのちょっとしたこと”なんだと思います。でも、それが本当はすごく大きな差になっているだろうなというのは、昨シーズンを振り返って思いました。それで言うと、常にチャンピオンを獲るという気持ちを切らすことなく、シーズンを戦っていかないと、多分あの結果には結びつかないと思います」

「その気持ちをドライバーだけでなく、チームにも波及させるような走りや立ち振る舞いをしていかないといけないです。そういった意味で、また自分がここで成長するシーズンになるだろうと思うし、必ずそれが結果に繋がるんじゃないかなと思っています」

「今は問題点を出し合って、次にどうするかという話もできています。これから開幕に向けてテストもいくつか残っているので、昨年の最終戦よりも遥かに良い状態で開幕戦に臨める体制が整っていると思います」

「ドライバーの僕と福住選手がコース上で気持ちを持って走り続けるというところで最後まできっちりと仕事ができれば、必ずチャンピオンにたどり着くと思っています。全戦どんな状況においても、しっかりと気持ちは出していきたいなと思います。

本当の意味で、“エース”の自覚に目覚め始めた野尻智紀。2021シーズンの彼は、きっとARTAにとって、これまでにないほど力強く、頼りになる存在になってくれることだろう。

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