今季2台体制になったもう1台、16号車のチーフメカニックを紹介しよう。杉尾クルーチーフの下で頑張って来た経験11年目の男子、藤原開。
昨年、杉尾から抜擢されこのポジションに就いた。穏やかと取れるキャラクターは、16号車を駆るドライバー二人に似ている。ひたむきに頑張っている姿は、周囲のスタッフはしっかり認識していた。彼は、信頼できるスタッフと共に仕事をできることがチーフを任命されたとき、この仕事をやってやる!という強い気持ちになったそうだ。みんながいるから自分がチーフとしてやれていると、周囲への感謝は常に忘れない。
スタッフのコミュニケーションもばっちりの16号車は、第7戦終了時点で気づけばランキング3位とタイトル争いに絡む。第5戦鈴鹿でポールトゥウィン!第7戦オートポリスでは、ポールポジション、決勝2位と素晴らしい戦績を残している。それでは、チーフメカニック藤原のインタビューをどうぞ。
―現在のお仕事の内容を教えてください
藤原:今年から16号車のチーフメカニックをしています。工場内だと基本的にマシンのメンテナンスの全体を見ていますが、自分でも手を動かしていて自分はマシンの後ろを見ながら、前をやっている方々の作業をチェックしています。
―チーフメカを任されたときのお気持ちを教えてください
藤原:昨年までは、杉尾さんの下でメカニックをやっていまして、秋くらいだったと思いますが、チーフメカニックをできるかと言われました。打診があったときに、一緒に仕事をするメンバーの名前を聞いて、そのメンバーがとても信頼している方々ばかりでしたので、楽しみというか、よし!やるぞ!という気持ちを強く持ちました。他で経験を積んで2020年から無限に在籍して4年目、今年でキャリアは11年目となりますが初チーフという事になりました。今もとても緊張しています。
―2023年、ここまでのシーズンはどうでしたか?
藤原:ここまでチーフという立場でやって来てみんなをサポートはしていますが、みんながとっても頑張ってくれているので…、自分は名前だけチーフというのもおかしいですが、みんなに支えられてチーフという仕事が出来ています。
―16号車の目標は何でしょうか?
藤原:もちろんチャンピオンを狙って行くことが目標ですが、そんな中でメカニックやチーム、スポンサーさんも、勝った時に自分たちと一緒にやり遂げたという気持ちと、みんなが同じ方向をしっかり向いて一緒に戦ったという実感を持ちたいですね。それが今の目標です。シーズンが始まる頃は、みんなで一回は勝ちたいね!が目標でしたが、実際勝つと欲が出てきて“タイトルを獲りたい”に目標が変わりました。
―勝つとチームが良いムードでまとまるということがありますが
藤原:もともとまとまっているチームで、僕がいなくてもまわるんです(笑)。お互い潤滑にまわっていることで、勝つぞ!という意識から結果としてこの前優勝したのかもしれません。そして、勝つぞという意識が自然とタイトル争いへとみんなの意識が移っていると思っています。
ー第5戦鈴鹿での優勝の瞬間はどうでしたか?お祝いはできましたか?
藤原:優勝してから車検に時間がかかっていましたね。われわれの車は優勝しましたが、車検はしっかり通る自信はありました。車検の時間、自分は好きです。対策もきちんとして来ているので、あの時はまったく心配はありませんでした。あの日は撤収などもあり帰りはとても遅かったですが、サーキットから移動している仲間と祝杯をあげました。あの時間はとても楽しかったです。
ードライバーのお二人はどんな感じでしょう?
藤原:二人のドライバーは、F3(全日本F3選手権、現在のスーパーフォーミュラライツ)の頃から知っているので、彼らのキャラクターはよくわかっています。二人とも緊張するタイプなので、表では強気なことを言うこともありますが、裏では心配していたりするのでそういう時はこちらも大丈夫だよ!と声がけをしたりしています。チームがペナルティなど迷惑をかけてしまい、二人には申し訳なかったのですが、次、取り戻そうという気持ちでずっとやって来ました。彼らはわれわれのミスに対しては、大丈夫と優しく声をかけてくれました。
ーでは、業界に入ったきっかけを教えてください
藤原:最初は、小6か中1だったと思うのですが鈴鹿サーキットにSUPER GTを見に行っていたのがレースと関わるきっかけかもしれません。毎年、父と2歳上の兄とで当時の鈴鹿の開幕戦に行っていました。兄がとてもGTが好きでミニカーを収集するほどレースを楽しんでいるタイプでしたが、自分は観戦は好きでしたが、そこまでは興味がなかったですね。そのうち高校生になり受験勉強がイヤで、大学ではなく早く進路が決まる専門学校に行こうと考えたんです。そして何を専門にしよう?と考えたときに、クルマということになりました。岐阜の出身なのですが県内の学校なども調べて見学に行ったりもしましたが、結局関西の自動車専門学校に入学しました。そこで勉強し、いざ就職となった際は、学校の先生にレーシングチームを紹介してもらい、業界に入ることとなりました。2013年に就職したのですが、当時はフォーミュラのレースを担当していました。しかし、思いのほか仕事が自分にとってきつかったので辞めようと思って年末に相談をしたら、GTのほうに仕事が変わり、またそこで頑張りました。その後、しばらくして無限に入社しました。
ープライベートは?お休みする時間はありますか?
藤原:外にあまり出ません(笑)。しっかり休日も取っています。働く環境はとても良いと思います。SUPER GTのない6月に広島に行ったのですが、行くまでは空港に行くのすら面倒なのですが行ったら行ったで楽しくて…。16号車には旅行好きがいますので、自分がやるのが面倒くさいので計画を立ててもらおうとしたら“広島は弱い”と言われました。その彼は沖縄については、とても詳しいんです。そんなスタッフもいます。
―業界を目指す若者へ
藤原:僕が学生の時は、このレース業界は“きつい”としか言われなくて昔の業界を知る先生しかいませんでしたので、そんなイメージで就職しました。しかし時代は変わっていて、今はまったく休めないということもなく、むしろそんな環境はなくなっていると思います。確かに仕事に取り組むと、「仕事」ですから苦しいことが多いのかもしれませんが、自分はこの仕事が好きだから平気です。ですので、まず業界に入ってやってみることをお勧めしますね。
ありがとうございました。
チーム内でみんなといろいろ話という藤原。いろんな意見を出し合って仕事をしていくのが自分のスタイルとのこと。そんなフレキシブルに過ぎたシーズン初年度は、どんな結果が待ち受けているのだろう?
最終戦に乞うご期待!
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