終始流れを掴めない試練の週末。“強さ”を取り戻せるか | ARTA

2022.9.8

2022.9.8

終始流れを掴めない試練の週末。“強さ”を取り戻せるか

鈴鹿サーキットで行われたSUPER GT第5戦。8号車ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)は15台中13位に終わった。彼らにとっては今季ワーストのリザルトであり、今季初めて入賞を逃す形となった。

「厳しいレースになってしまいました。長い距離のレースでしたが、浮上のチャンスも掴めないまま終わってしまいました(野尻)」

「公式練習から厳しい状況で、うまく流れを変えることができない週末でした(福住)」

 ドライバー二人がそう語るように、今回の8号車はレースウィークを通して厳しい戦いを強いられてしまった。

 試練は走行初日(8月27日)の午前に行なわれた公式練習から始まっていた。セッション前半は福住、後半は野尻が乗り込み、10分間のGT500専有走行を迎えるタイミングでは1分47秒348という4番手のベストタイムを記録していたが、福住は走り出しからコンディションが変わっていくにつれ、徐々にマシンのフィーリングが悪くなっているのを感じ取っていたという。

 専有走行は野尻が担当した。各車がベストタイムを更新していく中、8号車はタイムを上げることができず、むしろタイムが落ちてしまうような状況で、10番手に終わった。タイヤ選択の問題なのか、車両セットアップの問題なのか……ハッキリとした原因を掴むことはできなかった。

「データで出ていることの逆を僕たちが感じ取っていたりしました。モータースポーツの難しいところが表れていたと思います(福住)」

 不安要素が拭えない中で行われた予選では、Q1を福住が担当。大きなミスもなくアタックをまとめて1分46秒025というタイムをマークし、本人も「これなら悪くない位置にいけるだろう」と感じていたようだが、Q2進出ラインである8番手のタイム(1分45秒824)には0.201秒届かず、10番手でQ1敗退に終わった。

「細かいところでもう少し詰められた部分はあるかもしれませんが、8番手までコンマ2秒の差がありましたから、それだけでは詰められないタイム差だったのかなと思います。起きていることは(公式練習から)根本的に変わらず、予選でも同じ問題を抱えて走っていたのだと思います(福住)」

 迎えた決勝日。レース前のウォームアップ走行でもフィーリングの悪さが露呈したため、チームは残された時間でなんとかマシンを良くしようと、セットアップ変更を行なった。レースウィーク前から企てていた戦略が機能することを信じて−−。

 その戦略とは、2回の再給油が義務付けられている今回のレースにおいて、序盤に短い給油のみのピットストップを実施して義務1回目を消化し、レース折り返し付近で2度目のピットストップ(給油、タイヤ交換、ドライバー交代の“フルサービス”)を行なうという戦略。こうすることで、序盤のタイムロスの主な原因であるトラフィックを避けて自分のペースで走ることができ、序盤にセーフティカーが出た際も優位にレースを進めることができるのだ。

「サーキット入りする前段階から、ミーティングを通じてこういった作戦が一番良いだろうという話をしていました。予選順位を踏まえてこの戦略にしようと決めたのではなく、予選順位がある程度上でもこの作戦にしようと決めていました(野尻)」

 77周で競われる450kmレースがスタート。スタートドライバーの福住は予定通りわずか7周でピットに入り、上位集団から1分ほど離れたところに合流して周回を続けた。決勝前のアジャストが奏功してマシンのフィーリングは改善されていたものの、それでもペースは「並より遅いくらい(福住)」といった状況。スタートから履き続けるタイヤのグリップダウンも始まる中、福住はなんとか食らいつく走りを見せ、各車が1回目のピットストップを終えた段階ではトップ集団から30秒遅れの5番手につけていた。

 そして41周目に2度目のピットストップを行い、野尻にドライバー交代。野尻がコースに出た段階では、まだ2回目のピットを終えていない先頭集団から1周遅れという状況だった。

 そんな中で、50周目にアクシデント発生。GT300クラスの車両が130Rでクラッシュしたことによりセーフティカーが出され、この時点で先頭車両と同一周回に入れていなかった8号車にとっては厳しい展開となってしまった。残る周回で野尻は1ポイントでも持ち帰るべく、前後を走る車両とバトルを繰り広げたが、結果的に13位でのフィニッシュとなった。

 トップと同一周回でセーフティカーを迎えていれば上位入賞も可能な展開だったが、ペースがもう一歩足りず戦略を活かしきれなかったことにドライバーたちも悔しさをにじませていた。

「今まではダメな時は本当にダメというレースが多く、安定性に欠ける部分があったのですが、今年は追い上げられるレースもあったし、毎戦ちゃんとポイントを取れていたので、チームとしてだいぶ強くなってきたと思っていました。それだけに今回の結果は悔しいです(福住)」

「5月の鈴鹿戦では予選で下位に沈んだものの、決勝は比較的良いパフォーマンスで走れていました。その時とコンディションが近いこともあり、似たような方向性のセットアップを持ち込んできましたが、前回と同じようなフィーリングは得られませんでした。そこ(コンディション)だけでは語れないところもあるのかなと思います(野尻)」

 8号車のふたりは現在ドライバーランキング10番手となっているが、ランキングトップとの差は23.5点で、最大63点を獲得できる残り3戦での逆転は可能だ。例年以上に各車が拮抗している印象を受ける今季のGT500クラス。その中で大量得点を獲得することは容易ではないが、野尻はその鍵の一つとして「走り出しから“戦えるクルマ”にしておくこと」を挙げた。

 確かに、今季のGT500ウィナーの公式練習での順位を見てみると、その平均順位は4.2番手。今季表彰台に上がった車両の中で、練習走行で6番手以内に入れなかった例はわずか3例しかない。そういったデータを踏まえても、走行時間が限られている近年のSUPER GTを制する上で、レースウィーク中に悩みもがいている時間はないと言っても過言ではない。

 次の第6戦の舞台は、昨年8号車がポールポジションを獲得したスポーツランドSUGO。ただ決勝レースではペナルティもあり悔しいレースに終わっているだけに、そのリベンジを狙う。チャンピオン争いに生き残ることを考えても、優勝、最低でも表彰台が目標となってくるだろう。

 鈴鹿での苦しいレースを経て、各自が多くの課題を持ち帰った8号車の面々。SUGOで“強さ”を取り戻し、昨年のリベンジを果たして笑顔で表彰台に登る二人が見たい。

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