2020.11.2

2020.11.2

「2020年ARTAドライバーの素顔」欧州での武者修行から帰国した驚速ルーキー福住仁嶺

選手に焦点を当て、直近のレースを振り返り、綴るミニコラム

ARTAはSUPER GTでのホームチーム

GP3、FIA F2と海外フォーミュラで3シーズンを戦った福住仁嶺は2019年、ARTA GTチームに「復帰」した。欧州修業に旅立つ前年の2015年に、福住は一度だけARTA CR-ZでGT300に出場した経験がある。つまり、ARTAは彼にとってSUPER GTでのホームチームなのだ。

「(鈴木)亜久里さんは本当にポジティブな人なので、それが僕らにも伝わってきて、毎回とてもいい雰囲気でレースウイークを過ごすことができています。良い結果が出たときはとことん喜び、悪いときでも『次だ』といつも前向きなので、次も頑張ろうという気持ちにさせてくれます」

SUPER GT初フル参戦となった2019年は、ベテランの高木真一と組み、ARTA NSX GT3でGT300クラスの年間チャンピオンに輝いた。そして福住は、親ほど年が離れている高木から多くを学んだという。

「GT300の走らせ方はもちろん、セットアップの進めかた、チームとのコミュニケーション、ファンの人たちへの対応など、いろいろなことを見て学びました。あと、釣りのやり方も。1回だけですけど、川に鱒を釣りに行ったんです。僕自身、魚に触るのはあまり得意ではないんですが(笑)。GT300を経験したことが、今年GT500を戦う上で本当に役立っています。たとえば、GT300を抜かすとき、相手がどのような状況にあり、どうやって抜いてあげたらお互い楽なのかなど、良く分かるんです」

ステップアップ後のGT500で待ち受けていた、予想以上に苦しいシーズン

そして2020年、福住はGT500にステップアップし、野尻智紀とペアを組んだ。第6戦までにARTA NSX-GTは3回ポールポジションを獲得。そのうち2回が福住のQ2アタックによって得たものだ。予選での爆発的な速さに定評のある野尻だが、福住もまったく負けていない。

「野尻選手はクルマの状況把握とフィードバックが本当に細かいんです。『本当にそこまで分かってるの?』と思うくらい、細い部分までちゃんとチームに伝える。僕にはそのあたりがまだ少し欠けていると感じます。ただ、僕と野尻選手は似たタイプで、クルマに対して求めることはほぼ同じ。レースに対して少し慎重というか、ビビリなところも似ていますね(笑)」

誰もが速さを認めるふたりだが、今季はそのスピードがなかなか結果に結びつかず、6戦で2回表彰台に立つも、優勝には至っていない。

「予想以上に苦しいシーズンが続いています。とくに前半は厳しかった。でも、そういった苦しい戦いを経てクルマが改善され、良い形でシーズンを終えることが大事なのだと考えています。思い返せば、FIA F2のときも精神的には苦しかった。でも、そのようなつらい経験を糧にできるかどうかは自分次第。そうやって、前向きに考えられるのは亜久里さんのお陰でもあります」

圧倒的なスピードの裏に見え隠れする、細やかな神経

ところで、レースに出かける前、福住は自分の部屋をきちんと整えてから家を出るという。

「帰ってきたときに部屋がぐちゃぐちゃになっているのがすごくイヤなので、スッキリと片づけてから出発します。ルーティンのひとつですね。あと、渡欧する前は、レースが終わった翌日の月曜日に温泉に行くのもルーティンでした。レースって、身体も疲れますが、精神的にも疲れるので、それを温泉で癒していたんです。最近はまったく行けないですが」

ナチュラルな言動と、圧倒的なスピードの裏に見え隠れする、細やかな神経。それが福住の魅力であり、ときに弱点にもなるが、年齢とキャリアを重ね、精神的な強さは確実に増している。

「プロのドライバーの入口には立っているとは思いますが、まだまだ足らない部分も多い。もっとメンタルを強化し、自分を磨き、どのような状況でもきちんとした仕事ができるようになりたいと思っています」

速さはすでにトップレベル。しかし福住は己の現在地に満足していない。彼が目指すのは「強い」ドライバー。徳島が生んだスピードボーイの進化は、なおも続く。

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