真夏の“900km”に向け、光は見えた | ARTA

2022.6.8

2022.6.8

真夏の“900km”に向け、光は見えた

鈴鹿サーキットで行われたSUPER GT第3戦。8号車ARTA NSX-GTは13番グリッドからスタートし、7位でフィニッシュ。6ポジションアップで貴重なポイントを持ち帰った。

大クラッシュの発生、続出するペナルティの裁定、そしてセーフティカーランの中での最大延長時間到達によるチェッカーと、大荒れのレースとなった第2戦富士。優勝したのは8号車だったが、野尻智紀と福住仁嶺は複雑な表情を浮かべていた。それは、せっかくの優勝がハーフポイントになってしまったからではない。「次は自分たちが満足できる形の優勝ができるように」……福住が記者会見で語ったその言葉が全てだった。

練習走行は予想通りのフィーリング

5月28日(土)、第3戦のレースウィークがスタート。午前中には練習走行が行われた。前半は福住、後半は野尻がマシンに乗り込み、ベースとなる持ち込みセットアップから少しずつ悪い部分を消していくような形で作業を進めていった。福住は予選想定のショートランで1分46秒432という7番手タイムをマークして野尻に交代。野尻の走行時間にはショートランの確認ができず、タイムの更新はならなかったものの、ロングランで有益なデータを集めることができた。

「FP(練習走行)から予想通りのフィーリングがありました」と語るのは担当エンジニアのライアン・ディングル。福住も「今回の持ち込みセットアップは(鈴鹿での)タイヤテストの時と比べて色々変えてありますが、走り初めから変えたことでの効果が出ているというフィーリングがあり、予選に向けて自信がありました」と言う。

予選結果は予想を悪い意味で裏切るような形に

ポジティブな状況の中で予選を迎えた8号車。練習走行でショートランの確認が出来ていた福住がQ1を担当し、想定通りのパフォーマンスを出せたものの、結果は彼らの予想を悪い意味で裏切るような形となってしまう。

「クルマは正直想像通り。バランスやパフォーマンスは悪くはなかったけど、ちょっと足りなかった」(ライアン)

「思った以上にライバルがタイムアップした一方、僕たちはフリー走行から予選にかけてあまりタイムアップできませんでした」(福住)

予選Q1では福住が1分45秒388をマーク。練習走行から1秒以上タイムアップして見せたが、ライバルの中には2秒以上タイムアップしたチームもあり、8号車は13番手に終わった。とはいえ、Q2進出ラインである8番手のタイムとはわずか0.189差。GT500クラスがいかに拮抗しているかを象徴する予選でもあった。

調子は悪くないのに、結果に繋がらない……。その点にはQ1を走った福住も悩まされたというが、チームはそこからコミュニケーションを徹底し、決勝用のセットアップについて議論を行った。

次に繋がるレースになった

迎えた決勝レース。5月末にもかかわらず、鈴鹿は路面温度が50℃を超えるなど真夏のようなコンディションとなった。

スタートドライバーを務めた福住は、我慢のレースを強いられる。団子状態の集団グループにあってはダウンフォースが抜けてしまう場面も多く、なかなかライバルの前に出られない。「物足りないスティントになった」と言う福住は、最低周回数の18周を走ったところで野尻にバトンタッチ。しかし福住がドライブ中、後半スティントのタイヤ選択に関して的確なフィードバックをしたことも功を奏し、野尻が乗り込んでからは怒涛の追い上げを見せた。

 野尻はピットアウトした直後から好ペースでマージンを稼いだことにより、その後ピットインしたライバルたちを逆転。いわゆる“アンダーカット”を成功させた。野尻はその他にもコース上でライバルをオーバーテイクし、気付けば6番手までポジションを上げていた。

「僕たちはこれまで、決勝でのタイヤとの合わせ込みが微妙にできていなかった印象でしたが、ここに来て決勝に向けたセットアップのアジャストがうまくいきました。その甲斐あってペースも良く、挽回できたと思います」(野尻)

 終盤のセーフティカー出動からのリスタート後はその勢いに若干の陰りが見え、最終的には24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zにわずか0.043秒先行されての7位フィニッシュに終わったが、今回のロングランペースは今後に向けた好材料となった。

「決勝のペースは非常に良かったので、そこは次回の鈴鹿戦(第5戦)に向けて好材料だと思います。今回も少なくともポイントは獲れましたし、次に繋がるレースになったのではないかと思います」(野尻)

 路面温度50℃というコンディションの中で見せた好調なロングランペースが意味するものは大きい。というのも、この後控える第4戦富士、第5戦鈴鹿はいずれも真夏である8月の開催。そしてレース距離は今回(300km)よりも長い450kmなのだ。暑いコンディションの中でより長く安定したペースを刻める車両が優位に立てることが予想されるため、好結果への期待は膨らむ。

「今回の決勝レースは、第5戦に向けても良いペースでした。鈴鹿は個人的にはあまり得意ではありませんでしたが、ようやくショートランもロングランも“普通”のクルマを作れた感じです」と語るライアン。まずは得意の富士で優勝を目指し、続く鈴鹿戦では燃料流量リストリクターを絞られた状態でトップ5に食い込む……それが彼の思い描く青写真だ。

一方の野尻も「どこかでビッグポイントは獲らないといけない。直近の2〜3レースの間で1勝しておきたい」と語る。今回のレースを鑑みて、予選での一発の速さは課題になるとしながらも、富士と鈴鹿のレースペースは「良い方向に行ってくれると思います」と口にした。

真夏の2連戦、合計“900km”を越えた先に光は見えるか……第4戦富士は8月7日、第5戦鈴鹿は8月28日に行われる。

文/戎井健一郎(motorsport.com)

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