最下位から始まった今季初優勝への道 | ARTA

2021.10.26

2021.10.26

最下位から始まった今季初優勝への道

待ちに待った瞬間がついにやってきた。SUPER GTのGT500クラスに参戦する8号車ARTA NSX-GTが、第6戦オートポリスで今シーズン初優勝を飾った。

“最下位”から始まった第6戦のレースウィーク

決勝では4番グリッドから徐々に順位を上げ、レース中盤の30周目にトップに浮上。そこから、後続を大きく引き離した。8号車の力強さが随所で光ったレースだったが、土曜日朝に行われた公式練習の段階では、全くと言って良いほど、手応えがない状態だったのだ。

前回までのペナルティポイントの累積により、福住仁嶺に対し公式練習の後半1時間は出走ができないという制限がかけられた。そのため、福住仁嶺が最初に走行を担当したのだが、そこでオートポリス用に持ち込んだセッティングがうまく噛み合わず、セッション開始から1時間20分の時点では最下位に沈んでいた。

「土曜日朝の走り出しでは、持ち込んできたクルマのポテンシャルが下位に沈んでしまう状況で、そのあたりを直すのに時間がかかり過ぎてしまいましたが、最後には『これだったら、ある程度のタイムは出せるかな』というところまでは持ってくることができました」(野尻智紀)

試行錯誤の上、最終的には3番手タイムを記録するまで挽回。これで流れを取り戻し、予選Q1では福住仁嶺が4番手通過を果たすと、Q2担当の野尻智紀も渾身のアタックをみせ、4番グリッドを獲得した。

「公式練習では赤旗中断もありましたし、クルマの状況もあまり良くなかったので、まともに新品タイヤを履いて走れていない状況でした。だから、Q1を僕が担当というのもすごく不安でしたが、その中でもしっかりQ2にバトンを渡すことができて、最終的に4位で終わることができました。ポールポジションは獲れなかったですが、流れとしては上り調子で土曜日を終えられたのかなと思います」(福住仁嶺)

次なる課題は“決勝でのレースペース”

公式練習での苦戦を考えると上出来に近い結果ではあったのだが、予選後の2人は険しい表情をしていた。野尻智紀は決勝レースに向けて、こう予想していた。

「このままでは決勝は厳しくなると思っています。だから、決勝に向けて直さなければいけないところがたくさんあるので、強く戦えるクルマに仕上げる必要があります。公式練習では時間の都合もあってロングランもできなかったので、限られた時間の中で精度の高い予想を立てて臨みたいです」

8号車メンバーによる予選後のミーティングは日が暮れるまで行われた。その中で、過去のデータを全て洗い出し、決勝で強いクルマを導き出した。

「決勝に向けては今までのデータもしっかり振り返って、クルマを良い方向に変えることができました。その点は僕というよりチームの頑張りとか、野尻さんのおかげだと思っています」

そう語る福住仁嶺は、スタートから安定したペースで前を走るライバルについていき、26周目に野尻智紀にバトンをつないだ。

30周目に64号車NSX-GTとのバトルを制し、トップに浮上した8号車。順調なペースでリードを広げ、残り20周を切ったところで、15秒のアドバンテージを築いたのだが、野尻智紀は最後まで気を緩めずに、自分を追い込んでいった。

「気持ちだけは切らしてはいけないと思っていたので、あえてチームにたくさん情報をくれるようにと要望を伝えていました。確かに楽な状況にはなってきたところはありましたけど、その中でも厳しさだしていかないと次につながらないと思っていました。しっかりと形にできたかなと思います。」

そうして、チーム一丸となって最後まで戦い続けた8号車。最後は28秒もの大差で、悲願のトップチェッカーを受けた。

早くも次を見据えて動き始める野尻智紀と福住仁嶺

ようやく掴み取った今季初勝利。パルクフェルメに戻ってきた野尻智紀は、満面の笑みでガッツポーズをみせ、福住仁嶺や8号車のスタッフたちと、喜びを分かち合っていた。

「本当に“お待たせしました”という感じです。なかなか結果が出ず、皆さんが勝利を渇望されていた中で、ようやく優勝という結果を手にすることができて本当にうれしく思います。たくさんの方々のサポートに感謝したいです」(野尻智紀)

レース後は表彰式に記者会見、さらにメディアの取材対応に追われ、ピットガレージに戻ってきたのは午後6時近くのことだった。

勝利の余韻に浸っているのかと思いきや、すでに2人とも次戦に向けた行動を開始していた。

「今回のパフォーマンスで満足せずに今後に向けて見直せるところはちゃんとイチから見直していかないといけません。そうしないと、次戦でまた下位に沈んでしまうことも、可能性として考えられるので、そうならないようにインターバルは短いですけど、しっかりと頑張りたいです」(福住仁嶺)

2021シーズンも残り2戦。この勢いで有終の美を飾ることができるか……。野尻智紀と福住仁嶺の挑戦は、まだまだ続く。

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