佐藤蓮のSUPER GT初挑戦記vol.9「1.8秒差で届かなかった初勝利」 | ARTA

2021.11.15

2021.11.15

佐藤蓮のSUPER GT初挑戦記vol.9「1.8秒差で届かなかった初勝利」

2021年のSUPER GTで、55号車ARTA NSX GT3でGT300クラスに参戦中の佐藤蓮。第7戦ツインリンクもてぎでは、彼の成長と勝利への想いが存分に見られた1戦だった。

予選アタック前、佐藤蓮の目つきが変わった

同地では、今シーズン2度目のレースとなるとなるのだが、ホンダNSX GT3にとって相性はあまり良くないコース。金曜日の段階から、前向きな話がなかなか出てこなかった。

しかし、いざ土曜日のセッションが始まると、走り始めから好ペースで周回し、公式練習では1分46秒901で5番手につけた。

「だんだんセットアップが見つかってきて、練習走行の段階からクルマはすごく決まっていました。だから、今回はチャンスがあるなと思っていました」と語る高木真一。チームの雰囲気も上々だった。

午後の公式予選でも、その良い流れは継続。まずQ1では高木真一が担当し、1分46秒237でB組2番手につける走りをみせ、次のラウンドにつなげていく。

続くQ2の担当は佐藤蓮。前回のオートポリスでの失敗をはじめ、ここまで悔しいレースが続いていたが、今回は手応えをつかんでいるのか、今までとは違う鋭い目つきでマシンに乗り込んだ。

コースに出るとアグレッシブに攻めていき、最後までタイム更新を目指した。結果1分46秒015を記録したが、ライバルが0.3秒上回り、3番手で予選を終えた。

同じNSX GT3を使うチームにポールポジションを奪われたのだが、今回55号車は45kgのサクセスウェイトを搭載していることを考えると、上出来な結果。決勝レースでの逆転に向けて好位置につけた。

「思っていたより、走り出しからクルマのパフォーマンスは良くて、そこからアジャストしていって、すごく良い状態で予選に挑めました。サクセスウェイトを考えるとこれくらいのタイム差は仕方ないのかなと。決勝では良いポジションからスタートできます。ブリヂストンタイヤもロングランに関しては調子が良さそうですし、優勝を狙えるパフォーマンスはあると思うので、頑張りたいです」

「勝てなかった……」レース後にこぼれ落ちた悔し涙

晴天の中で始まった日曜日の決勝レース。55号車はいつも通り高木真一がスタートドライバーを務めた。序盤から好ペースで前を走るライバルに仕掛けていき、13周目にトップに浮上する。

その後も高木は順調に周回を重ねていき、2番手の61号車スバルBRZに対して6秒の差をつけて30周目にピットイン。リアタイヤ2本交換の作戦を採り、チームもミスのない作業でマシンを送り出した。

念願の初優勝が少しずつ現実味を帯びてきたと思われたが……チームも予想していなかったライバルが現れた21号車アウディR8 LMSだ。

瞬く間に、佐藤蓮が駆る55号車に近づくと、そのままオーバーテイクし、リードを広げていった。最初はマシンのバランスが思ったほど良くなく苦戦していた佐藤蓮だが、勝利への想いは強く持ち続けていた。

一時は6秒近くあった21号車との差を徐々に詰めていき、残り10周のところで4.2秒差に。その後も佐藤蓮は攻めの姿勢を緩めず、果敢に攻めていった。

だが、逆転するには時間が足りず、最終的に1.8秒後方まで迫ったところでチェッカーフラッグ。55号車は第5戦SUGOに続き、今季2度目となる2位表彰台となった。

「リアタイヤ2本交換の作戦でいきましたけど、21号車も同じリアタイヤのみの2本交換でした。ただ、ピットアウトした周のペースが違いすぎて、そのまま逆転されてしまいました。それまでトップを争っていた61号車を見ていたので、21号車に関しては本当にノーマークでした」

「そこから、しばらくはこちら側のマシンバランスが少し良くなくて、その間にギャップを築かれてしまいました。後半にペースが上がってきましたけど、その時点では追いつくには遠すぎる距離でした」

土屋圭市エグゼクティブアドバイザーは「21号車がノーウェイトだったことを考えると、上出来だよ!」と、今回の55号車の戦いぶりを讃えていたが、マシンを降りた佐藤蓮は大粒の悔し涙を流した。

SUPER GTはマシンの調子だけでなく、タイヤやレース展開など、様々な要素が複雑に絡み合い、勝敗が決する。今回の55号車でいくと、2位になったのは、ある意味で仕方がない部分もあったのかもしれない。それは理解できていても……ARTAの若武者にとっては、受け入れられない現実だったのかもしれない。

いよいよ最終戦、狙うは初優勝……そしてシリーズチャンピオン

今回のレースだけを見ると、悔しさが残る“2位”ではあったが、シリーズのチャンピオン争いを考えると、この結果は非常に大きなものだった。GT300クラスでランキング首位につけていた61号車が6位に終わったことで、高木真一/佐藤蓮の55号車は、10ポイント差のランキング3位につけることに成功した。

「結果としては優勝を目指していただけに悔しいものとなりましたが、チャンピオン争いを考えると2位表彰台は良い結果です」

「今回は、当初の予想と比べると、だいぶポジティブな結果だったと思います。次の富士はさらに得意なコースですので、より期待できると思います。次こそは、悔しい2位で終わらないように……優勝を目指して、頑張ります!」

今シーズン、数多くの経験をし、時には失敗もしてきた佐藤蓮だが、この第7戦を終えた彼の走りや表情を見ていると、開幕戦の頃とは比べ物にならないほどの成長を遂げたように感じられた。実際に、それが自信となって言動などにも表れ始めている。

あと、彼が求めるものは“最高の結果”だけ。初優勝、そしてシリーズチャンピオンをかけ……佐藤蓮は富士スピードウェイで行われる今季最後のバトルに向かう。

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