佐藤蓮の休日“レーシングカートで後輩たちに伝えたいこと” | ARTA

2021.10.5

2021.10.5

佐藤蓮の休日“レーシングカートで後輩たちに伝えたいこと”

スーパーGTのドライバーたちは、本番のレース以外にさまざまなスケジュールをこなさなければならない。筋力トレーニングはもちろん、過酷なレースを戦うシーズン中は、しっかり体を休めることも必要なはず。しかし、ARTA 55号車を駆る佐藤蓮は、ゲストドライバーとしてカートのレースに出場する。現地に出向き、スーパーGTの合間を縫ってカートに出場する理由やカートの魅力について語ってもらった。

■なぜオフの日にまでカートに乗るのか

佐藤蓮がゲストドライバーとしてスポット参戦するのは、カートではトップカテゴリーとなるOKクラス。本来であればゆっくり体を休めても良いはずだが、なぜレーシングカートのレースに出場するのだろうか。

「大きな理由はトレーニングのためです。カートは想像以上に体力を使うので、とても良いフィジカルトレーニングになります」

抜きつ抜かれつのバトルによる緊張感と強いG。スーパーGTのドライバーは、そんな過酷な状況でおよそ2時間戦い貫くだけのフィジカル(肉体)が不可欠だ。レーシングカートは佐藤蓮にとって、トレーニングの一環として最適なのだろう。

「決まってはいませんが、カート(の大会)には出られるだけ出たいと思っています。スーパーGTのオフシーズンに乗れるだけ乗って、フィジカルに加えレース感を忘れないための良いトレーニングになるんです」

20歳になったばかり、まさに乾いたスポンジが水を吸い込むがごとく、レーサーとして成長著しい佐藤蓮。常に“レース”という環境に少しでも長い時間触れていることが大切なのだ。

■スーパーGTに通じるものは

ARTA55号車のNSX GT3とレーシングカート、見るからに大きさはもちろん、エンジンパワーも違う。“レースをする”ということ以外、スーパーGTに通じる点はどんなことがあるのだろうか。

「カートにはパワステはもちろん、サスペンションもミッションもないんですが、車高やタイヤの空気圧、エンジンなどのセットアップをすることはできます。構造がシンプルだからこそ、それらのセットアップがダイレクトに反映されるので、車の基礎を学ぶにはピッタリなんです」

「あと、カートのレースでは、多いときに30台以上が同時に走るので、レースの駆け引きやルールを学ぶことができます」

佐藤蓮をはじめ、現在ARTAで活躍する野尻智紀や福住仁嶺も、子供のころからカートで腕を磨き、レースの戦い方や作法を学んできたのだ。

「余計なものが付いていないからこそ、運転自体もかなりシビアです。ブレーキ、ステアリング、アクセル、それぞれ操作のタイミングが少しでも狂うと速く走れません。そういった意味ではGTよりも難しいですね」

佐藤蓮が出場する“OKクラス”のマシンに搭載されるエンジンは、125ccの2ストロークエンジン。排気量だけ見れば小型のオートバイのようだが、最高速度は130km/h以上にもなる。

しかも、地面すれすれに着座しているため、体感速度は300km/hを超える。

■カートのレースには多くの先輩ドライバーが姿を見せる

ちなみに、カートのレースに訪れるのは佐藤選手だけではない。現役GTドライバーがオーナーを務めるチームが参戦していたり、後輩たちの応援に来ていたりする。

「子供の頃から見ていると、この子はどこまで行けるかっていうのが大体わかる。全チーム、全ドライバーが何度もテストを重ねてきた上で、チームの期待通りに走れるかが重要だよね」

そう語るのは、全日本カート選手権でプレゼンターを務めるARTA鈴木亜久里総監督。

「いまトップグループに居る子たちはやっぱり速い。もしかしたらこの中から、将来ARTAで走る子が出てくるかもしれないね。でも、それだけじゃなく、僕がここにきているのは、ここで戦っている子たちを応援したいからさ」

若手育成というARTAの基本コンセプトの元、将来モータースポーツを背負って立つかもしれない子供たちに、やさしくも真剣なまなざしを向けていた。

また、野尻智紀もサーキットを訪れ、後輩たちを激励。

「ルールや作法もそうですが、レースの基本はカートで多く学べます。それってすごく大事なことだと思います」

「あと、トップグループの何人かは、調子が良くないとき自分が何をすれば良いかを自分で考え、自分なりの答えを持っていると思うんです。カートはやれることが少ない代わりに、その変化は大きく出ます。」

「今日いきなり来て蓮が速いのは、カートを良く知っていて、自分が何をすれば良いかよく分かっているからなんですよね。遅いのには理由があるし、自分が何をすれば良いかがとにかく大切。それに、自分が走れているのは多くの大人とチームのおかげということもあります。それは上のカテゴリーでも同じなので、そういうことを意識しながら頑張ってもらいたいですね」

自身も6歳からカートを始め、これまで多くにタイトルを獲得し、着実に4輪のトップカテゴリーへとステップアップしてきた野尻智紀。これまで多くのことをカートで経験し、学んできたからこその言葉だ。

■レーサーを目指す後輩たちに伝えたいこと

GTドライバーの中ではルーキーの佐藤蓮だが、カートの世界ではベテラン。レース後、後輩や仲間達と話す姿が見られた。今も昔も、プロのレーシングドライバーになるには、カートで経験と実績を積むのが王道。取材時にも、真剣なまなざしで走る子供たちの姿が多く見られた。

「僕もカートでレースのいろはや、運転技術の基礎を学ばせてもらいました。一緒に走ること後輩たちにも何か伝えられたらと思っています」

スポット参戦とはいえ、レースではトップ争いに絡む佐藤蓮。一緒に走っている他の選手たちにとって、さまざまなことを学べる貴重な機会になるだろう。

「あと、僕が一緒に走ることで、カートから4輪へステップアップできるという夢を持ってもらえたらうれしいです」

カートがレーシングドライバーになるための王道とは言え、誰もがプロになれるほど簡単ではない。しかし、実際に夢への第一歩を叶えた佐藤蓮と一緒に走ることは、子供たちとってこれ以上にない刺激になるのではないだろうか。

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