2021年のSUPER GTで、55号車ARTA NSX GT3でGT300クラスに参戦中の佐藤蓮。シリーズの折り返しとなった第3戦鈴鹿大会で、目覚ましい活躍を見せた。
前回の第4戦もてぎでは、無得点に終わってしまった55号車。この鈴鹿大会で何とか挽回を目指したが、土曜日の公式練習は22番手と下位に沈む結果となってしまった。今回用意したタイヤが当日のコンディションにうまくマッチせず、苦戦を強いられることとなった。
初のQ1アタックで果敢に攻めるも……
後の公式予選は佐藤蓮が初めてQ1を担当した。A組の上位8台に入るべく果敢にタイムアタックを行った佐藤だったが、スプーンカーブで勢い余ってコースオフを喫してしまう。気を取り直して、次の周もタイム更新を試みたが、結果は1分59秒764で11番手。Q2進出はならなかった。
「クルマはそこまで悪くないですが、今週はブリヂストン勢が苦戦している状態でした。ポテンシャルが決して高くない中で、Q2に進むためには攻めるしかないと思っていました。そこで失敗をしてしまいました。ただ、翌周にそこそこのタイムは出せたので、良かったのかなというところですね」
今回に関しては、晴れのコンディションではライバルに競り勝つのは難しそうな状況にあったが、逆に雨のコンディションは自信を持っていた佐藤蓮。「明日は雨を願って……追い上げできるように頑張ります」と語り、予選日を終えた。
雨は降らずとも、見事な挽回劇を披露
迎えた日曜日の決勝レース。朝の段階では晴れていた鈴鹿サーキットだが、天気予報ではレースが始まる頃には雨が降るとのこと。この一報に佐藤蓮も笑みがこぼれていた。
しかし、いざスタート時刻を迎えると、雨雲は南に逸れてしまい、佐藤蓮の願いは届かず。それでも、ひとつでも上を狙って、チーム一丸となって挽回していく作戦を立てる。
「決勝で雨が降れば挽回はできるかなとは思っていましたが、いろんな作戦を考えて前に出るチャンスを探りました」
当初は雨が降ってくることを想定して、高木真一ができるだけ長めに走り、27周目にピットイン。ここで佐藤蓮がマシンに乗り込んだ。
コースに戻ると22番手だったのだが、ここから佐藤はGT300クラスのなかで一番と言っても良いペースで周回を重ね始めると、次々と前のマシンを追い抜き始めた。ここ鈴鹿はコース幅が狭いこともあり、GT500クラスとの混走があったとしても、コース上で順位を上げていくのはそう簡単なことではないのだが、佐藤蓮は着々と順位を上げていき、残り10周というところでポイント圏内に進出した。
願っていた雨は降らなかったが、逆に晴れのコンディションが続いたことで路面状況に変化が現れ、それが55号車に味方した。佐藤蓮は最終ラップまで攻め続け、最終的に7位でフィニッシュ。優勝や表彰台には手が届かない結果だったが、土屋圭市エグゼクティブアドバイザーは、佐藤蓮の走りを高く評価し、笑顔で出迎えていた。
「雨……降りませんでしたね」
開口一番にそうつぶやいた佐藤蓮だったが、その表情は“良いレースができた!”と自信に満ちていた。
「決勝のペースは自分たちが想定したよりも速かったですね。鈴鹿サーキット・レーシング・スクール出身でもあるので、ここはホームコースでもあります。タイヤのマネジメントとかバトルの駆け引きも、その経験が活きたのかなと思います。とにかくトラクション(加速力)勝負だなと考えていましたが、そこもホームコースということで仕掛けるポイントも抑えられていたのは良かったです」
「ペースを終盤まで維持できたというのと、抜きにくいコースでこれだけ順位を上げてこられたというのは、すごいポジティブなレースでしたし、やれることはやったのかなと思います。強いていうなら、最終ラップも3位争いをしている車両が目の前に見えていたので、そこに食い込めなかったのは心残りではあります。その悔しさは、次のSUGOで晴らしたいなと思います」
シーズン前半戦の中で、間違いなく自己ベストと言っても良い内容だった佐藤蓮。この走りをできたことで、自身の中でも自信につながったのは確かで、チームの雰囲気もかなり良くなっていた。
この流れを、9月から始まる後半戦につなげられることができるのか。佐藤蓮の活躍がますます楽しみになった1戦だった。
Related Products
関連商品