2021年、55号車ARTA NSX GT3からデビューとなった佐藤蓮。4月10日~11日に岡山国際サーキットで行われた第1戦では、SUPER GTというレースの厳しさを痛感する結果となった。
トップを獲るには、わずかなコンディション変化にも対応しなければならない
今回の舞台となった岡山国際サーキットは、3月の公式テストで走り込んだコースということで、データは豊富にとれていた。しかし、第1戦は、気温と路面温度が非常に上昇し、同じ“晴れ”とは言っても、路面のコンディションは公式テストとは随分と違っていた。
今のSUPER GTはGT500・GT300ともに勝利を掴むために重箱の隅をつつくほど緻密な戦いを繰り広げている。そのため、気温や路面温度が2~3℃変わるだけでも、それに合わせてマシンのセッティングのみならず、タイヤの温め方など細かい部分まで気を遣って対応しなければならないのだ。
55号車ARTA NSX GT3は、高木がQ1B組で3番手通過を果たし、Q2の佐藤へバトンタッチ。ポールポジションをかけたタイムアタック合戦に臨んだ。
しかし、この間に路面温度が上昇。微妙なコンディションの変化に合わせ込むことができず、上位につけたライバルがQ1よりタイムを上げてきたなか、佐藤は高木のタイムを上回ることができず、Q2は9番手という結果に終わった。もう少し上位のポジションを狙っていただけに、予選後の佐藤は悔しそうな表情を見せた。
「緊張することはなかったですけど、思ったよりバランスが合わなくて、上位勢とは差がついてしまったのかな、というところはありました」
「もう少し上位を狙っていたので、ちょっと悔しい部分もあったんですけど……。やっぱり原因としてはGT500が走って、路面やコンディションの変化に対するアジャストが、クルマ的にも足りなかったところがあるのかなと思うところがあります」
そう語った佐藤だが、早くも決勝での挽回を目指してチームとともに準備に入った。
「レースに向けては、ロングランが速くて、良いペースがあることは分かっているので、表彰台を目指して、ポイントを出来るだけ持ち帰れるようにしたいです」
わずかな焦りが……。大きな反省点が残ったデビュー戦
4月11日の決勝レースも前日に引き続き朝から晴天に恵まれ、気温20℃、路面温度30℃を超え、例年の岡山大会と比べると“暑い”と感じるコンディションだった。
55号車は、まず高木がスタートドライバーを務めた。ここ岡山はコース上での追い抜きが難しいが、その中でも的確にチャンスを見極めてポジションアップ。29周を終えたところでピットインし、佐藤に交代した。
後半スティントで少しでも順位を上げていきたかった佐藤だが、その前に立ちはだかったのが、31号車プリウスPHV。常に0.4~0.5秒の間隔を維持し、隙を探り続けたのだが、相手も百戦錬磨のベテランな上に、コースは追い抜きが難しい岡山国際サーキット。こう着状態が続いた。
「相手と速いところが違ったので、差を詰められずにいました。岡山はコース幅が広くないということで、抜きにくいところもありました。後半の10周くらいは同じような展開が続いていましたね」
そんな中、ゴールまで残り10周になろうかというところで、展開が動く。GT500クラスとの混走を利用して、バックストレートに入るところで31号車の真後ろまで接近できたのだ。
「ここは『チャンスだ!』と思って、インから勝負を仕掛けにいきましたけど……けっこう無理な感じではありました」
ヘアピンでインからオーバーテイクを試みた佐藤だったが、無理に飛び込んでしまったがゆえに相手に接触。31号車はスピンをしてしまった。これにより、佐藤に対して危険なドライブ行為として、ドライブスルーペナルティが出された。
更には接触の影響で55号車にもダメージが及んでおり、残り7周のところでピットイン。悔しさを噛みしめながら初戦を終えることになった。
「ペースも十分に空いていなくて、無理に飛び込んでいたので、止まりきれなくて……そこで接触してしまいました。その影響でクルマにも不具合が出てしまったので、途中でピットインすることになりました」
「ちょっと焦ってしまったところがあったので……そこは反省しなければいけません」
1ポイントでも多く持ち帰りたいという強い気持ちがあったゆえに、こう着状態となった後半スティントで焦りが出てしまった。SUPER GTというレースは、ひとつのミスは時に大きな致命傷になっていまう……それほどシビアなカテゴリーでもある。
今回がデビュー戦となった佐藤は、それを身を以て経験することとなった。
第2戦富士でのリベンジを誓う佐藤
レース後は落胆した表情も垣間見えた佐藤だったが、落ち込んでいる暇はない。すぐに第2戦富士大会が5月の初旬に開催される。そこに向けて、必死に前を向いて、この失敗を取り返そうとしていた。
「開幕戦でポイントを獲れなかったというのは、ちょっと痛いんですけど……まだ始まったばかりなので、この経験を生かして、同じ失敗を繰り返さないように、成長できればと思っています」
「富士はNSXとしても得意なコースでもあると思うので、なんとか優勝を目指して、チームの皆さんと頑張って行きたいと思います」
そう佐藤も語る通り、富士スピードウェイは55号車も優勝や表彰台の経験が何度もある相性の良いコース。3月の公式テストでも念入りに走り込んでおり、準備はできている。
レースでの失敗を取り返すには、レースで結果を残すしかない……。
その思いを内に秘め、佐藤は次なる戦いに向かっていく。
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