共にレースを戦うレーシングメカニックの仕事 | ARTA

2021.3.19

2021.3.19

共にレースを戦うレーシングメカニックの仕事

コンマ1秒を争うレース中のピットワークや、車両のメンテナンスを担当するレーシングメカニック。ドライバーと共にレースには欠かせない存在だが、レース中以外の仕事についてはあまり知られていない。普段レーシングメカニックはどんな仕事をしているのか、そして求められる資質とは何かについてご紹介しよう。

マシンを最高のコンディションに整えるレーシングメカニックの仕事

スーパーGT GT300を走るARTA55号車を担当するメカニックは3人。彼らはレース中のピットワークはもちろん、レースウイーク以外でのメンテナンスを担当する。

また、フリー走行から予選、決勝まで使う6セットのタイヤやガソリンを準備。さらにピットの設営も彼らの大切な仕事だ。

ピットの設営が終わるとフリー走行の準備に取り掛かる。フリー走行ではできる限りドライバーからのフィードバックを聞き、エンジニアの指示を仰ぎながら予選に向けセットを決める。

そして予選、決勝へと進むが、万が一どこかでトラブルが発生した場合は夜通し作業を行うことも少なくない。

傷んだマシンを労りつつ次の戦いへ向け準備

2020年最終戦を終えフロントグリルが割れている55号車

無事決勝を終えると、メカニックたちは次のレースに向け準備に取り掛かる。その準備でもっとも大切なのがメンテナンスだ。

市販車の場合、車をバラバラにするような整備を行うことはまずないが、レース車両は1レースごとに車をバラバラにしてメンテナンスを行う。通常の決勝レースで300km、長いレースでは1,000kmの距離を極限状態で戦うマシンは、レースを戦い終えると、想像以上に傷んだ状態で帰ってくる。

55号車を担当する3人のメカニックは、そんな状態のマシンをいたわるように、レースが終われば分解し消耗品を交換。また、それぞれの部品がどんな消耗の仕方をしているのかもしっかり記録する。そうすることでメンテナンスサイクルを管理し、トラブルが起こらないようにしているのだ。

池田クルーチーフに聞く!レーシングメカニックに必要な資質とは

おそろいのスーツに身を包み、ピットインでマシンに飛びつく彼らの姿に憧れる若者も多い。「どうしたらレースメカニックになれるのか?」という質問を受けることも少なくない。

そこで、GT500とGT300のメカニックたちを束ねる池田クルーチーフに、レースメカニックに求められる資質とは何か話を聞いた。

「レースメカニックに必要な資質とはなにか?」という単刀直入な質問に対し、池田クルーチーフは「自分で考え、行動できること」と即答。いたってシンプルで、業種を問わず必要な資質かもしれない。

自ら考え行動し先輩から盗む

この自分で考えて行動することが、極限状態でコンマ1秒を争うレーシングカーをメンテナンスする上でかなり重要である。

レースで勝つためには、チームワークが大切だ。しかしそれは、人数が限られる中で勝利を目指す以上、チームメンバーの誰一人として替えが効かないことを意味する。

また、市販車でもそうだが、車の整備では教科書に載っていない“感覚的”な技術が必要不可欠だ。それは言葉で聞くことではなく先輩から盗むもの。だからこそ、指示待ちではなく自ら考えて行動できなければ、厳しいレースの世界で生き残っていくことはできない。

3年目にして55号車に抜擢された大木 GT300チーフメカニック

池田クルーチーフに続いて話を聞いたのは、2020年シーズンを戦った55号車の大木GT300チーフメカニック。彼と話していてまず感じたのは、担当する55号車とレースで勝つことに対する真っすぐな眼差しだ。

2018年に専門学校を卒業してすぐ、この世界に飛び込んだ大木メカニックは、まずGT500の8号車、NSX GTの3rdメカニックを経験。2019年も1年間8号車の3rdメカニックを務め、2020年はGT300 55号車のチーフメカニックに抜擢された。23歳という若さ、そして、入社3年目でチーフを任されるのは異例の早さだ。

池田クルーチーフによれば、普段の大木メカニックは仕事に対してとにかく貪欲で真面目。自ら行動して考える姿を見て、彼に任せても大丈夫だと判断したとのこと。そんな彼の仕事に臨む姿勢は、日々使っている工具を観れば一目瞭然。常にピカピカに磨かれ整理整頓されている。

ネジ1本の締め忘れが大事故につながるメカニックの仕事。確実な仕事のために欠かせない工具は、毎日仕事が終わると必ず磨いているのだとか。

そんな大木メカニックは、将来F1をはじめ海外のカテゴリーのメカニックにも挑戦してみたいという。もしも、彼が巣立つときが来てしまったら仲間として寂しい思いもあるが、その夢を心から応援したいとも思うのである。

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