若さ故のミスに思い悩んだ日々を乗り越え……成長見せつけた最終戦|木村偉織:2022シーズン振り返り | ARTA

2022.12.28

2022.12.28

若さ故のミスに思い悩んだ日々を乗り越え……成長見せつけた最終戦|木村偉織:2022シーズン振り返り

今季55号車ARTA NSX GT3のドライバーとしてSUPER GT・GT300クラスにデビューを果たした木村偉織。ホンダ期待の若手ドライバーのひとりである木村は、かつて福住仁嶺、大湯都史樹、佐藤蓮を輩出した“出世コース”のシートに収まった形だが、そのルーキーシーズンには過酷な道のりが待ち受けていた。

これまではFIA F4など、イコールコンディションで行なわれるレースの参戦がメインだった木村。SUPER GT、特にGT300は、様々な車種のマシンが様々なメーカーのタイヤを履いて入り乱れるという異種格闘技戦のような状況を、性能調整等によって均衡のとれたコンペティションにしているという特殊なカテゴリーであり、そういった点でも“GTの戦い方”を身に付けることには苦労したようだ。

「GTはタイヤメーカーも違えばクルマも違うということで、同じようなドライビングをしていても、それぞれ強みや弱みが全く違います。そういったところを理解した上でレースをしないといけないところが特に難しいと思いました」

「車重が違うという点でドライビングの仕方も違いますが、クルマを乗りこなすという点においてはそれほど大きく違わない印象で、速く走るという点では早く順応することができたと思います」

また木村にとっては、もうひとつアジャストが必要な部分があった。それがメンタルの部分。誰よりも速く、常にフルプッシュで——。そんな気持ちが前面に出過ぎるあまり、開幕戦から2戦続けて他車と接触し、ペナルティを受けてしまった。その後は少しずつ意識を改善していくも、第6戦SUGOでは雨の難しいコンディションの中でバックマーカーの処理に失敗し、またしてもペナルティ。レース後に沈痛な面持ちで相手チームへの謝罪に出向く木村の姿には痛々しさを感じるほどであった。

そんな辛い時期において、相方である武藤の存在にも助けられたという。

「相方の武藤さんには救われました。結果が悪かったり、自分がやらかしちゃって落ち込んでいる時に『ご飯行こうよ』と声をかけてくださったり、その時に悩みを話したりしました。オートポリスでも入賞圏内にいる時にパンクしちゃったりと流れが悪かったですが『最終戦は結果どうこうよりも楽しんでいこうよ』と声をかけて下さりました」

「もちろん怒られたこともありますが、良いものは良い、悪いものは悪いとちゃんと言ってくださる、良い兄貴という感じです」

スーパーGT 第6戦 武藤英紀 木村偉織

木村はそういった精神的なバックアップも得ながら、スーパーフォーミュラ・ライツからGT300へのドライビング感覚の切り替えを迅速にするためにレースウィーク前のシミュレータトレーニングを徹底するなど、努力も欠かさなかった。そういった取り組みが功を奏してか、自身のドライビングやチームのセットアップ作業の質も高まり、55号車は後半戦に向けて着実に戦闘力を高めていった。

迎えた最終戦。予選Q1では武藤がA組3番手で木村にバトンを渡すと、木村はQ2でコースレコードを更新する圧巻の走りでポールポジションを獲得。プレッシャーを跳ね除けて大仕事をやってのけた木村はマシンを降りると喜びを爆発させ、直後のインタビューでは人目もはばからず号泣した。

そして決勝レースでスタートを担当した木村は、オープニングラップでフロントロウ2番グリッドの18号車UPGARAGE NSX GT3の先行を許すが、彼はここで焦りを見せることはなかった。

「1周目は小林(崇志)さんに抜かれましたが、今までだったら焦ってそれを取り戻そうとしちゃっていたと思います」

「でもタイヤをセーブして、相手がピットに入ったところでオーバーカットを狙おうと、気持ちを切り替えることができました。レースの考え方も変わり、全体を俯瞰して見ることができるようになったと思います」

その言葉通り、木村は冷静に安定したペースで周回を重ねて武藤にバトンタッチ。全車がルーティンのピット作業を終えると55号車は首位に立ち、そのままトップでチェッカーを受けた。

レース後には涙を見せなかった木村だが、ホッとしたという部分が大きかったと語る。そして山あり谷ありのシーズンを総括して、次のように語った。

「自分のミスやトラブルなどで歯車が噛み合わない中で迎えた最終戦でしたが、それが最後にがっちり噛み合って、チーム本来の強さ、自分自身の強さがしっかり出し切れたレースでした。全員が良い仕事ができた最終戦でした」

「色々辛いシーズンでしたが、最終的には良い1年だったなと思います」

「細かい部分を挙げるとキリがない」と語るほど、様々な部分で成長できたと語る木村。その成長は、最終戦での勇姿を見れば誰の目にも明らかだ。

今後は「自分の活躍によって誰かに力を与えられたり、恩返しができるようなドライバーになりたい」と語る木村の挑戦は始まったばかり。ARTAでの濃密な1年で得た経験を、次のステップに活かせるか。その活躍にこれからも目が離せない。




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