購入できるレーシングカー!?FIA GT3車両のNSX GT3ってどんなマシン? | ARTA

2021.3.12

2021.3.12

購入できるレーシングカー!?FIA GT3車両のNSX GT3ってどんなマシン?

さまざまな車両が同時にレースを行うスーパーGT。JAF-GT500という統一規則で制作されたGT500に対して、さまざまなメーカーや車種が出場するGT300には、大きく分けて3つの規定で作られたマシンが存在する。

今回は、FIA GT3車両であるNSX GT3がどんなマシンなのかを解説しつつ、実際にメンテナンスやレース中の作業を担うARTAのメカニックたちに、NSX GT3の特徴について話を聞いた。

GT300には規定も特性も違う3種類のマシンが走る

GT300には、FIA-GT3、JAF-GT300、そして2015年からデビューしたマザーシャシー。これら既定の違うマシンが存在し、バラエティに富んだ車種が走っている。また、それぞれ特性が大きく違うことも、レースを面白くさせるポイントだ。

FIA-GT3

正式名称を「Groupe GT3(仏語:グループGT3)」、日本では一般的にFIA-GT3やGT3と呼ばれる。FIA(国際自動車連盟)が規定するカテゴリーの一つに属し、世界中のレースで使用されているレーシングカーだ。

その大きな特徴の一つが、自動車メーカーが開発・製造し販売されていること。価格はメーカーによって違いはあるが、都内なら分譲マンションが、地方なら庭付き一戸建てが買えるような価格である。

スーパーGTでは、タイヤやブレーキなど一部のパーツを除き改造が認められていない代わりに、メーカーが開発費用を負担している分、イニシャルコスト(初期費用)は低め。また、後述するJAFマシンに比べ、エンジンパワーは若干優っている。

なお、ARTAの55号車であるNSX GT3は、ホンダが販売するFIA-GT3既定のマシンだ。

JAF-GT300

世界中のレースで使用されているFIA-GT3に対し、スーパーGT独自の規定で開発されるJAF-GT300(またはJAF-GT)。FIA-GT3と同じく市販車をベースとしているが、実態は新規に開発された純然たるレーシングカーで、イニシャルコストや運用コストは高め。

その分FIA-GT3よりも空力パーツやエンジン(ベース車両のメーカーに限る)など、改造できる範囲が広く、メーカーやエントラントごとの個性が色濃く出るのが大きな特徴だ。エンジンパワーではFIA-GT3に劣るものの、燃費やコーナリング性能で有利とされている。

マザーシャシー

正式名称はJAF-GT300マザーシャシー(JAF-GT300 MC)であることからも分かるように、基本的には上記のJAF-GT300に準じており、スーパーGTのプロモーターであるGTアソシエイション(GTA)が販売する。

モノコックやエンジン、駆動系などに共通のパーツを使用することでコストを抑えつつ、ボディやサスペンションなどの変更や改造が認められ、チームの個性やこだわりが色濃く表れているのが特徴だ。

細かな規定はJAF-GT300を基本としているため、FIA-GT3よりもエンジンパワーが劣る反面、車両の最低重量が軽く、燃費やコーナリング性能で優れている。

ARTA 55号車 NSX GT3の特徴

ARTAでは、2019年からFIA-GT3車両であるNSX GT3でGT300を戦っている。先述した通り、FIA-GT3車両は改造範囲がかなり限られているため、他チームのNSX GT3と大きな差はないが、選択の自由が認められている範囲で言えば、タイヤはブリヂストン、ブレーキパッドはプロジェクトμ製を使用する。

改造範囲が限られるということは、マシンそのものの性能差がほぼ無い。レースで勝利するためには、NSX GT-3の特性を熟知するのはもちろんのこと、BoP(性能調整)やウエイトハンデ、さらにはサーキットの特徴に合わせたセッティングと戦略が欠かせない。

メカニックから見たNSX GT3はどんなマシン?

そんなFIA-GT3車両である55号車、NSX GT3のメンテナンスを行う現場のメカニックたちに、NSX GT3ならではの特徴を聞いてみた。

ミッドシップならではの利点と苦労

まず大きな特徴として、NSX GT-3は市販車のホンダ NSXと同じく、エンジンをキャビンの後ろに搭載するミッドシップであることを挙げてくれた。

あくまで一般論だが、重量物であるエンジンを車体の中央付近に搭載するミッドシップは、FR(フロントエンジン・リア駆動)車両よりも重量バランスに優れ、コーナリング性能が高いとされている。しかし、メカニックの立場からすれば、ミッドシップならではの苦労もあるという。

難儀なエンジン交換と高い締め付けトルク

写真を見てもらえば分かるように、NSX GT3のエンジンスペース上部には、剛性確保のためのブレース(柱)がある。そのため、エンジンを脱着する場合には、車両の下からエンジンを抜かねばならず、レースの現場では苦労するポイントだという。

実際、2020年の最終戦では急遽エンジン交換に迫られ、チーム総出でエンジンを交換。その際、車をおおよそ腰の高さに持ち上げつつ、車両の下に潜り込みながら作業をする姿が見られた。

また、ほかのFIA-GT3と比較すると、NSX GT3は各ボルトの締め付けトルクが強いという。クルマには無数のボルトが使用されているが、特にエンジンやサスペンションなど、走行に直結する箇所のボルトは締め付ける強さ「トルク」が定められている。たかがボルトと侮るなかれ。ボルトの締め付けにばらつきがあると、トラブルのもとになるばかりか、マシンの走行バランスを崩す原因にもなりかねない。

ARTA55号車のメカニックたちは、それがレース本番に行う作業であっても、正確なトルクでボルトを締め、確実な作業をこなしているのだ。

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