2021.3.5

2021.3.5

メカニックに聞く!GT300にしかない面白さ&難しさ

日本一の観客動員数を誇るというスーパーGT。さまざまなレースがある中で、なぜスーパーGTが人気を集めているのか?GT500とGT300の違いをご紹介しつつ、55号車のメンテナンスとレース中のピットワークをこなす現役メカニックに、その難しさと面白さについて聞いた。

■最高速は約20km/h、タイムは10秒違うGT500とGT300

スーパーGTのもっとも特徴的なポイントは、GT500とGT300という性能差のあるマシンが同時にレースを行うことだ。

NSX GTを使用しGT500を戦う8号車と、NSX GT3でGT300を戦う55号車。どちらもNSXの名を持ち、見た目的には市販車のNSXである。

NSXの見た目はしているものの、中身が純然たるレーシングカーであるGT500のNSX GTに対し、GT300の55号車は改造範囲の限られたFIA GT3車両。ここで一口に“性能差”と言っても、両者の差は非常に大きい。

約1.5kmある富士スピードウェイのホームストレートでは、300km/h近くの速度が出るGT500に対し、GT300は速い車で280km/h。また、サーキットによっては、1周で10秒以上のタイム差があることも珍しくない。

そのため、GT500のマシンはGT300のマシンを抜きつつレースを戦う。当然GT300のマシンは後ろからGT500のマシンが迫ってくれば道を譲り、なおかつ同クラスのライバルと戦わなければならない。

■いかにロスなく“抜き”“抜かれるか”がレース結果に大きく影響する

大きな性能差のある車両が混走するスーパーGTでは、ただ抜かれるだけでも細心の注意が必要だ。

基本的には速い車に道を譲ることになるが、周回が進むにつれ、レコードライン以外の路面状況は悪くなり、ラインから外れることでタイムは落ち、時にはスピンしてしまう危険も伴う。また、GT500をスムーズに行かせるためとは言え、レース中のGT300も不用意にアクセルを緩めるわけにはいかない。

そこで、レース中は、“パッシング”や“ウインカー”を使ってGT500とGT300が意思疎通を行う場面が頻繁に見られる。

GT500はGT300に追いついた際、パッシングすることで自らの存在を知らせ、GT300はウインカーを出すことで、自分が左右のどちらに寄るのかを伝えているのだ。

NSX GT3の55号車の場合、市販車のようにウインカーレバーがあるわけではなく、センターコンソールの位置にウインカースイッチが設けられている。

レースではコーナリングがタイムに大きく影響する。GT300にしてみれば、当然ロスの少ないストレートでかわしてもらいたいもの。しかし、そう都合のいいタイミングばかりではないため、どうやってGT500に抜かれているのかに注目してみても面白い。

■性能差がほとんどないからこそ仕事の正確性が求められる

クラス違いの車両が混走する以外に、スーパーGTのレースを面白くしている要因は、チームや車両によって大きな性能差がないことだ。

特にFIA GT3とJAF GT300が存在するGT300では、BoP(バランス オブ パフォーマンス)と呼ばれる性能調整が行われる。さらに、NSX GT3の55号車は、FIA GT3規定に準じて各自動車メーカーが製造した車両。他の車両に比べ改造範囲が限られ、同じNSX GT3同士の場合、車両自体の性能差はほぼ無いに等しい。

そのため、タイヤ交換やドライバー交代などを行うピットストップがレース結果に大きく影響する。ドライバーが稼いだタイムを削らないよう、素早いピット作業はもちろんのこと、ピットインのタイミングや給油量など、刻々と変化するレースの状況に合わせ、チームは常に最良の選択をしなければならない。

また、現役のメカニックたちは、より性能が拮抗するGT300ならではの難しさとして、同じNSX GT3同士であっても、ストレートスピードに差が出ることを挙げた。

もちろんダウンフォースの設定量や、サスペンションのセッティングといった戦略的な差もあるが、極限状態で争われるレースの場合、些細なことがタイムに大きく影響する。ボルト一つの締め付け、詳細なデータ取りなど、メカニックたちにはマシンが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、正確な仕事が求められるのだ。

性能差のある車両の混走により、こう着状態のないレース展開に加え、同クラス同士の拮抗した勝負やチームの駆け引き。これらさまざま要素が同時に観られることこそ、スーパーGTの魅力なのだろう。

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