2020.12.15

2020.12.15

「2020年ARTAドライバーの素顔」40歳で覚醒、50歳を超えても進化する驚異のベテラン高木真一

スーパー耐久シリーズ第3戦の決勝レース中、大クラッシュに見舞われた高木真一。すぐに病院へと緊急搬送され、腰椎と右手首を骨折していることが確認された。しかし、それから約20日後、彼はSUPER GT最終戦富士のピットに姿を現した。

「いまの医療技術は進んでいて、日曜日に怪我をして木曜日に手術。翌日の金曜日には立ち上がっていました。早めに復帰をするためにはボルトとプレートを入れたほうがすぐに動けるようになるということで、そうしたんです。歩けるようになったし、病院にずっといてもリハビリの限界があると思い、先生に許可をもらい富士に来ちゃいました。最終戦だし、スタッフやお客さんに元気な姿を見せて安心してもらいたかった思いもあります」

ARTAとしてGT300タイトル連覇がかかる大事なシーズン終盤戦。他のレースでの怪我により欠場しなければならなかったことを、申し訳ないと思う気持ちが高木のなかにはあった。しかし、もちろん誰ひとり高木を責めるものはおらず、元気に歩き回る彼の姿はチームに明るさと活力を与えた。

「セッティングとか少しでも若いドライバーにアドバイスしたかったし、岡島(慎太郎)もトラックエンジニアとしては今年1年目なので、少しでも手助けをできたらいいなぁと。とはいえ、いまのチームの流れを崩さないように、できるだけ遠目で見ながらね」

今年、50歳を迎えた。GT300は22年目。2019年はクラス最多勝利数を21に更新し、自身2度目となるチャンピオンを若きチームメイトである福住仁嶺とともに勝ち取った。年齢を重ね、衰えるどころかさらに実力を増しているように見える。

「土屋(圭市)さんが、どこかで『高木は40歳を越えてから速くなった』と言っていたようです(笑)。振り返ってみれば、2010年までは一緒に組んでいた新田(守男)さんにおんぶにだっこでした。新田さんがセッティングとかを全部やってくれて、僕はそれを学びながらパフォーマンスを出すことに専念できた。彼がチームを離れて僕が新田さんの立場になり、責任やレースに対する役割がドーンと増え、いろいろ考えるようになったのは間違いないし、ドライビングもいい方向に活性化したと思います」

経験豊かな大ベテラン。しかし鬼軍曹ではない。昨年組んだ福住や、今年パートナーとなった大湯都史樹は「父のような存在」として慕う。親子ほども年が離れた若きチームメイトを人柄とスピードで牽引し、すべてを隠すことなく与え、1年で育てる名コーチでもある。

「仁嶺にしても都史樹にしても本当に速いドライバーだし、彼らと組んでレースをするのは本当に楽しいですね。若い子の速さを間近で見ると『スゲーな、やはりジジイはジジイだな』と思うけれど、同じくらいのスピードで走れると『オレもまだまだ行けるぞ』と自信がついたりと、葛藤はすごくあります(笑)。そして、彼らに教えるだけでなく、学んだり刺激を受けることも多いですね」

高木によれば、シミュレーターで育ってきた福住や大湯は、たとえばギヤシフトなどをゲーム感覚で行なうという。機械の構造を熟知し、労る走りを良しとしてきた高木からすると、理解が難しいドライビングをすることも少なくないようだ。

「でも、それが決して悪いわけではなくて、そういうのもアリだなと。オッサンとしては、違う細胞も動かしてやることも必要だと思い、自分もシミュレーターを始めました。画面の情報だけで走らなければならないので、ある意味実車以上に集中力がいるし、とにかく疲れます。だから、集中力を高めるという点では、実際のレースでも役に立つのではないかと思っています」

50歳になってなお、新たなことに挑戦し、さらに速くなろうと志を高く保つ。その姿勢、そして現役のフォーミュラドライバーにもひけをとらない速さがあるからこそ、高木は求められるのだ。

そんな高木の趣味は釣り。彼を良く知る人は、レーシングドライバーであると同時に、釣り人であるという。実際、力の入れ方や技術は完全に趣味の領域を越えている。しかし、しばらくは大好きな釣りを諦めなくてはなさそうだ。

「今年最後に行ったのは、滋賀県にノドグロを釣りにいった9月だったと思います。その後一気にレースが続き、身体がこんなことになってしまった。本当は今すぐにでも釣りに行きたいけれど、ドクターストップがかかっているんです。縦揺れが身体に良くないので、クルマはともかく船には絶対に乗るなと言われてしまいました。動かないですむワカサギ釣りや、立ってやる鱒釣りだったらいいと思うんですけど、きっと釣りよりも先にレースに復帰することになるでしょうね(笑)」

逆境に陥っても笑顔を絶やさず、ただひたすら前向きに。そのポジティブな姿勢はARTAというチームのカラーそのもの。高木真一はさらにパワーアップしてレースに帰ってくるはずだ。

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