「2020年ARTAドライバーの素顔」“師匠・高木”から多くを学び急成長中の大湯都史樹 | ARTA

2020.11.16

2020.11.16

「2020年ARTAドライバーの素顔」“師匠・高木”から多くを学び急成長中の大湯都史樹

選手に焦点を当て、直近のレースを振り返り、綴るミニコラム

チャンピオンチームで迎えるSUPER GTデビューイヤー

飄々(ひょうひょう)としている。クルマに乗り込む直前まで笑顔を絶やさない。しかし、走りは鋭く、バトルは熱い。そのギャップこそが、大湯都史樹の魅力だ。今年からARTAに加わり、GT300クラスを戦うNSX GT3のステアリングをベテラン高木真一とシェアする。フォーミュラ育ち。GTマシンでのレース経験は皆無に近かったが、あっという間に乗りこなし、2020年シーズンの最終戦を前にシリーズ6位につけている。

「開幕前の岡山テストでは『まあ、行けるだろう』と、少し調子をこいていたような気がします。でも、実際に走ったら高木選手が本当に速くて『何この人、自分の親くらいの年齢なのに、すごいぞ。ちょっと勝てないかも……』となりました。結局、テストでは思うように走れず、自分にはハコ車のセンスはないのかもしれないと心配になりました」

いざ、シーズンが始まると大湯は天性のスピードを発揮し、2戦目でポディウムに立った。まるで親子のようなふたり。大湯は高木を「師匠」とあおぎ、セッティングやタイヤの使い方など多くを学んだという。その高木は、スーパー耐久決勝レース中の怪我により第7戦もてぎを欠場した。早くも訪れた独り立ちの日。大湯はしっかりと自分の仕事をやり抜いたが「やっぱり高木さんがいないと寂しい」と、師の不在を悲しんだ。

誰からも求められるドライバーを目指して

国内のトップカテゴリーではまだそれほど目立つ結果を残していないが、大湯の速さは誰もが認めるところ。若手ドライバーの登竜門、SRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ)を首席で卒業した。現在、F1にもっとも近い男といわれる角田裕毅を抑えての首席だった。また、その角田の代役としてスポット出場した2019年ユーロフォーミュラ・オープンのシルバーストン戦(イギリス)では、2戦連続でポールtoフィニッシュを達成。ファステストラップまで刻むなど、完璧にレースを支配した。彼が、世界でも通じる速さを備えたドライバーであることは間違いない。

「誰よりも速く走れる自信はありますし、ドライバーとして一番大切な部分は持っていると信じています。でも、それ以外の部分は……少しだけ大目に見てください。人とのコミュニケーションがちょっと苦手で、自分では一生懸命やっているんですが、チンプンカンプンなところが面白いと周りの人に思われているようです(笑)」

いまや多くのドライバーがYou tubeにチャンネルを持っているが、大湯のそれは、ユルユルとした雰囲気が楽しいと評判だ。見れば、彼がどんなキャラクターなのか、すぐに分かる。「ファンの皆さんを楽しませたくて始めたんです。この時代、サーキットに行けないファンにも笑顔を届けたいと思って。僕は、人を喜ばせることが好きなんです」

大湯によれば、スタート直前でも気負わずリラックスしているように見えるのは、それは極度の緊張を忘れるための自分なりの対応策なのだという。「ああしていないと、カーッと頭に血がのぼってしまうんです。それでもまだ足りないくらいで、レースではつい自分の実力以上の走りをしてしまう。100%以上の力を出そうとするのは良くない部分ですね。もっともっと自然体でいないと」

たしかに、まだミスは少なくない。しかし、彼なら100%を越えない走りでも相手と勝負できるはずだ。それくらいのセンスが、大湯にはある。「僕の一番の目標は、誰からも求められるドライバーになること。いかなるカテゴリーであっても『こいつに乗って欲しい』と思ってもらえるようなドライバーになりたい。そのためには、ひとつひとつ結果を残していく必要があります」と、大湯は少しだけ真顔になった。

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