アスリートとしては、かなりのベテランと言っても良い年齢の高木真一。50歳を超えてもなお、トップカテゴリーの第一線で戦い続ける秘訣は何なのだろうか。
貴重なオフ日にお邪魔し、日ごろのトレーニングや休日の過ごし方について聞いた。
筋肉の張りを取り除き整えるボディケア
現代のGTマシンは、シーケンシャルシフトに重ステという時代に比べて快適になったと言われるが、それでもドライバーたちは、常に強いGに晒されながら戦っている。また、クールスーツが導入されているとは言え、夏のレースではその暑さにも耐えなければならない。
レースが“モータースポーツ”と呼ばれているように、レーシングドライバーはまさにアスリート。休日はトレーニングだけではなく、身体をしっかりケアすることも大切な仕事だ。
ARTA で20年以上ステアリングを握ってきた高木真一の場合、月に数回自宅近くの整体院に通いケアしているという。
高木真一が通うのは、日本代表のサッカー選手をはじめ、第一線級のスポーツ選手たちも通う整体院。院内には高木真一をはじめ、そんな選手たちの写真やポスターなどが飾られている。
「疲れがたまっているな、体が重いなと感じたときだけじゃなくて、特にレースの後に来ることが多いですね。筋肉のバランスを整えてもらいつつ、マッサージ的な要素もあるので体が軽くなるんですよ」
施術を行っている院長によれば、レース後の身体は普段とかなり違った状態だという。特に背筋や肩回りの張りが強いようで、レーシングドライバーならではの疲労ポイントのようだ。
実際の施術では、まず今の身体の状態を確認。マッサージやストレッチ、整体と1時間時間を掛けて身体を整えていく。
「やっぱり去年ケガをした後からは、今まで以上に身体の状態に気を付けるようになりました。今も全くケガの影響がないわけではないですし、レースを走り切るためにはボディケアは欠かせないですね」
高木真一は直近のレース(取材時はスーパー耐久終了直後)やたわいもない会話を院長と交わしつつ、ゆっくりと施術を受けていた。
海の空気を感じながらのランニング
アスリートであるレーシングドライバーは、ほかのスポーツ選手と同様に、普段からのトレーニングが欠かせない。今も第一線で戦い続けている高木真一。休日であっても、ウエイトトレーニングとランニングを行っているという。
「ウエイトトレーニングもランニングも、特に頻度を決めていません。ウエイトトレーニングはジムでだいたい月に4回くらい、ランニングは行けるときには行くという感じですね」
トレーニングと聞くと、ストイックに毎日身体を追い込むイメージもあるかもしれないが、いつでもベストな状態をキープすることが何より大切。また、高木真一はスーパーGT以外に、スーパー耐久にも参戦しており、頻繁にレーシングカーに乗ることそのものがトレーニングになっているのだろう。
実戦と休日を上手に使い、いつでも戦える身体をキープしているのは、ベテランならではと言ったところ。取材当日、高木真一が走るのは、江の島や烏帽子岩を臨む茅ケ崎の浜。途中釣り好きで知られる高木真一らしく砂浜の釣り人に話かけ、楽しみながらランニングをしているような印象だ。
「ランニングは持久力維持が一番の目的なので、キロ何分とかペースはあまり気にしてないですね。1回で走る距離はだいたい10kmくらいかな」
普段運動していない人にとって、10kmという距離は簡単に走れるものではない。ペースを気にしていないとは言え、日ごろから10km走っているのは、流石プロドライバーといったところだろう。
男の夢が詰まった自宅の“趣味部屋”
ファンの方はよくご存じの通り、高木真一と言えば自他ともに認める釣り好きで、釣り専門サイトにも特集されるほどだ。取材では自宅にお邪魔し、自身が“趣味部屋”と呼ぶ部屋に通してもらった。
「この部屋は、家を建てる時に造りました。まぁちょっと贅沢かもしれませんけど(笑)」
室内には、フォーミュラ時代の写真や、スーパーGTの前進「全日本GT選手権」でGTデビューしたGT500クラスのスープラの写真などが飾られている。
また、室内には釣った魚を長期保存もできるマイナス60度の冷凍庫に加え、、多くの釣り竿やリールも置かれた土間敷きの部屋は、まさに多くの男性が憧れる空間といったところだろう。
心身を整え厳しいレースを戦い続ける
過酷なレースの現場で、20年以上第一線で活躍する高木真一。今もARTA 55号車のドライバーとして、息子ほど年の離れた若い佐藤蓮と共に表彰台争いを繰り広げている。
身体のケアと趣味の釣り、そして決して無理をすることの無い日々のトレーニング。長年戦える身体を維持する秘訣は、自身の身体と向き合い身心のバランスを整えることにありそうだ。
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