まるでゲームのコントローラー? SUPER GTマシンのステアリングにあるボタンの機能とは? | ARTA

2021.12.6

2021.12.6

まるでゲームのコントローラー? SUPER GTマシンのステアリングにあるボタンの機能とは?

SUPER GTに参戦しているマシンのコックピットをのぞいて見ると、ステアリングに無数のボタンやスイッチ類が取り付けられているのが分かる。

年々進化を遂げているレーシングカー。それに伴い、ドライバーのコックピット内での操作も細かい部分まで調整ができるように工夫され、ボタンの数も増えている。

では、そのボタンはそれぞれどんな役割を果たすのか? 55号車ARTA NSX GT3をドライブする高木真一に、ホンダNSX GT3のコックピット内について解説してもらった。

ありとあらゆる操作が、すべてステアリング内で完結!

ステアリングを見てみると、ボタンに加えてダイヤルのスイッチがある。こちらについては後述するとして、まずは各ボタンの機能について聞いてみた。

「ステアリングに付いているボタンの中には、ピットと交信するためのラジオ(無線)ボタン、ピットレーンの速度制限時に使うボタン、あとはドリンクを飲む時に押すドリンクボタン、エンジン始動をするためのボタンも付いています」

「あとはワイパーのスイッチ、パッシングするときのボタン、何か異常が起きてモニターに表示されたものをリセットするためのボタンというのもありますね」

ちなみに今季から導入されたFCYの際はどうするのだろうか。

「FCYの時はピットレーンボタンで対応します。1速の状態でボタンを押すと時速50kmで制限されて、2速でボタンを押すと時速80kmで制限されるようになっています」

基本的にすべて親指で届く範囲内にボタンが配置され、瞬時に押せるデザインになっている。レース中は一瞬の判断の遅れが勝敗に左右するため、操作性という部分でも、ドライバーの負担にならないような配慮がなされているのだ。

また、最近ではコックピット内のディスプレイで表示されるものも多くなってきているため、必要に応じて表示するページを変えることもあるという。その切り替えボタンもステアリングに付いているという。

「確か5ページくらいまであったと思うんですけど、そのうちドライバーが使うのは最初の2ページくらいですね」

ドリンクを飲むときもボタンを押さなければいけない?

レーシングカーのステアリングで、少し興味深いのが“ドリンクボタン”だ。基本的にレースで車両に乗り込む際に、1リットル程度のドリンクボトルを搭載し、必要に応じて飲むことができる。

その際、このドリンクボタンを押すと、チューブを通してドライバーの口へ注がれるような仕組みになっているのだ。

様々な制御系を調節するのに活用される“ダイヤルスイッチ”

ホンダNSX GT3のステアリングには、ボタンだけでなくダイヤル式のスイッチもある。これについては、どのような機能となっているのか。

「いくつか機能があって、まずはエンジンのマップを切り替えるスイッチですね。レースの状況に応じて調整することで燃費走行もできたりします」

「スロットルの反応についても、ステアリングについているダイヤルで調節することができます。例えば、ドライバーがアクセルを思い切り開けても、スロットルがゆっくり開くようにできたりもします」

「あとはシフトダウン時にエンジンの回転数を上げてくれる“ブリッピング”の加減も調整できるようになっていますし、ABSとトラクションコントロールの強さも、それぞれ調整するダイヤルもあります」

使用頻度は少ないが重要なものばかり。センターコンソールのスイッチ

スイッチがついているのは、ステアリングだけではなく、ドライバーから見た右側の部分『センターコンソール』という場所にも、たくさんのスイッチが並んでいる。

「イグニッションスイッチ、エアコンのスイッチ、ABSのメインスイッチ、ギアボックスのオイルクーラーとか……基本的にほとんど触らないものがセンターコンソールについているんですが、NSX GT3の場合は、ウインカーがセンターコンソールにあります。使おうとすると視線を一度下げる(センターコンソールを見る)ことになるので、正直使いづらいですね」

今のレーシングカーは、ステアリングとペダルの操作だけではなく、レースの状況に応じて、コックピット内のスイッチ類を駆使して、より良い状態でゴールを目指していく。

もちろん、ボタンの押し間違いやダイヤルの調整間違いが原因でタイムロスをしてしまう可能性もある。それだけでなく、ダイヤルの数値をひとつ間違えるだけで、急にトラブルが発生してしまうということもあり得る。

それだけ、今のレーシングカーはボタンがたくさん付いて便利になった一方で、ミスをしないようにと細心の注意を払う必要があるのだ。

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