2021年のSUPER GTで、55号車ARTA NSX GT3でGT300クラスに参戦中の佐藤蓮。7月17日~18日に行われた真夏のツインリンクもてぎでの1戦は、SUPER GTの厳しい一面を知るレースとなった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で5月末に行われる予定だった第3戦鈴鹿大会が延期となり、SUPER GTは思わぬ形でインターバルができた。その間も、佐藤蓮は他のレースに参戦するなど、忙しい日々を過ごしていた。
開幕2戦を終えて、そんな佐藤蓮の戦いぶりを、周りはどう見ているのか? 今回はコンビを組む高木真一に聞いてみた。
「開幕戦では、初めてのSUPER GTで洗礼を受けてしまったところはありましたけど、それがあったからこそ、第2戦の富士では2スティントを走って、そういったアクシデントやトラブルを起こさず走っていました。その中でGT500の追い抜かせ方、GT300との戦い方を無理せずにこなしていったことが、3位表彰台につながったと思います」
「これから、SUPER GTのレースにどんどん慣れていけば、さらにパフォーマンスも上がっていくと思います。速さは十分にある選手です」
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2ヶ月半ぶりのSUPER GT。予選はなんと出番なし
今回の舞台となるツインリンクもてぎだが、NSX GT3が得意としているわけではなく、真夏の暑いコンディションでタイヤとブレーキの消耗も気にしなければならないコースであった。加えて、前回の第2戦富士で3位に入ったこともあり、33kgのサクセスウェイトを背負ってのレース。周りにはウェイトを積んでいないライバルも多く、決して楽な展開とはならなかった。
土曜日の公式予選。いつも通りQ1を高木真一が担当した。だが、ライバルも手強く、続々とタイムを更新していく。その中で高木真一もベストな走りをみせたが、Q2進出ラインにわずか0.089秒届かず、A組10番手で敗退となってしまった。
Q1で敗退となると、もちろんQ2ドライバーの出番はない。これも佐藤蓮にとっては初めての経験となった。
「確かにこういう経験はないですね。今回はもともとパフォーマンスで苦労していた部分があったので、仕方ないのかなと思います」と佐藤蓮もコメントは少なめ。Q1を担当した高木真一も「Q1はギリギリいけるかなと思ったんですけど、ギリギリのところでダメな方向に行ってしまいました。もう少しタイムアタックの時のセットアップができていればなと思ったんですけど、思ったような感じにはいかなかったです」と悔しさをにじませていた。
灼熱の中で激走をみせるも……ゴール直前にピットイン
大会の開幕直前に関東地方がちょうど梅雨明けし、決勝日は気温33度、路面温度51度という、非常に暑いコンディションとなったツインリンクもてぎ。GT300の20番グリッドからスタートとなった55号車は、まず高木真一が乗り込んでスタートを切った。
ツインリンクもてぎは追い抜きが難しいコースだが、決勝ではペースよく周回を重ね、少しずつポジションを上げていった。
さらに23周目のピットストップで給油と後輪2本のみのタイヤ交換で済ませる作戦を採り、作業時間の短縮に成功。これが功を奏す形となり、一時は14番手まで浮上した。
しかし、後半スティントを担当していた佐藤蓮はコックピット内で暑さと戦っていた。ドライバーの体を冷やすために導入されているクールスーツがうまく機能しないトラブルが発生した。
システムのスイッチを入れても、ほとんど効果がないような状態だったため、佐藤蓮はスイッチを切ってレースを続行。レーシングカーは車内に熱がこもりやすく、外は真夏の状態。佐藤は気合いを入れて周回を重ねたが、徐々にペースダウンしていった。
そして、最終ラップに入る手前で自らピットイン。熱中症を発症して意識が朦朧としている状態だった。幸いすぐにメディカルセンターに運ばれ、レース終了から3時間後には元気にピットに戻る姿があったが、早速メカニックとマシンを覗き込んでクールスーツの対策について話し合っている様子。これもひとつの経験と捉えて前に進もうとしていた。
「ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です。次のレースも頑張ります」
そう語ってサーキットを後にした佐藤蓮。その背中を見ると、開幕戦の頃には感じられなかった“力強さ”が備わっているように感じたのと同時に、次のレースでは良い走りをしてくれそうな期待感を持たせてくれた。
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