ピット作業の停車位置には2パターンある? タイムロスを少なくするために施されている様々な工夫 | ARTA

2021.6.3

2021.6.3

ピット作業の停車位置には2パターンある? タイムロスを少なくするために施されている様々な工夫

SUPER GTでは、決勝レース中に必ず行われるピットストップ。そこでどんな作業を行っているかについては以前もご紹介したが、このピットストップの際に停車位置が1台につき2パターンあるのはご存知だろうか。

“通常ポジション”と“ダイブポジション”

基本的にピットストップを行う場合は、車両の通り道であるファストピットレーンに対して平行になるように、各チームのピットガレージ前に停車位置を決めて、作業時にはメカニックたちがそこでスタンバイして、マシンを待ち構える。いわゆる“通常ポジション”で、どのカテゴリーのピットストップでも、よく見る光景と言える。

しかし、SUPER GTはGT500・GT300合わせて40台以上が参戦し、各チームに割り当てられるピットエリアも決して広くはない。さらにSUPER GTマシンは一般の乗用車と比べても小回りが効かないため、停車位置に止めるためには、十分な進入スペースが必要となる。そんな時に、前後のピットでマシンが停車していると通常ポジションでのピットストップは困難になってしまうのだ。

そこで登場するのが“ダイブポジション”と呼ばれる、2パターン目の停車位置だ。これは、斜めにしてマシンを停車させる方法で、通常ポジションとは異なり、一度ステアリングを切るだけで停車させることができるという、一見するとシンプルな止め方だ。

これであれば、前後にマシンが止まっていても問題なく作業ができるメリットはあるのだが、デメリットとしては作業を完了して発進する時にマシンを少し押し戻さなければならないということ。これについては、事前に何度も練習を重ねてタイムロスは限りなく少なくなるように努力はしているのだが、どうしても通常時と比べて時間はかかってしまう。

この“ダイブポジション”は、前後のピットと作業のタイミングが重なった時に使用する緊急用のものとなっている。

大会前に、2パターンの停車位置を決めておく

これらの停車位置は、大会開幕前日の“搬入日”に、実際にマシンをピット前に並べて位置決めをする。その際に、各タイヤやストップボードを置く位置などに目印をつけて、メカニックたちがスムーズに配置につきやすいような工夫がされている。

自分たちのピットだと見分けがつくよう、こんな工夫も

ピットインの際には、停車位置を間違えないようにメカニックが誘導したり、チームによってはサインガードから矢印ボードを出して、ドライバーに知らせるのだが、ARTAでは今年からこんな工夫もしている。

8号車ARTA NSX-GTで使われているピット作業用のタワーだが、そこから伸びているインパクトレンチ(タイヤの脱着時に使用する工具)のホースを固定するアームにオレンジ色のテープを巻いてある。これにより、この場所が8号車のピットがどこにあるのかを見分けやすくしているのだ。

レースの展開によっては、多くのマシンが同時にピットインすることがあるが、その場合は大混乱に陥ることも少なくない。そういった時でも、自分たちのピットはここだという目印をつけておくだけで、ミスを未然に防ぐことができている。

SUPER GTにおいて、ピットストップは勝敗を分ける重要な要素

ドライバー、マシンのパフォーマンスだけでなく、レース途中のピットストップにかかる時間をいかに短縮するか、いかにミスなくマシンを送り出すかという部分も重要視されている。メカニックたちの作業の練度はもちろんのこと、それ以外の部分でも時間短縮につなげるための試行錯誤は、日々続いている。

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