佐藤蓮のSUPER GT初挑戦記vol.7「届きそうで届かない“初勝利”」 | ARTA

2021.9.21

2021.9.21

佐藤蓮のSUPER GT初挑戦記vol.7「届きそうで届かない“初勝利”」

2021年のSUPER GTで、55号車ARTA NSX GT3でGT300クラスに参戦中の佐藤蓮。シーズン前半で得た経験を活かし、第5戦SUGOではアグレッシブな走りをみせた。

入念なコースチェックから始まったレースウィーク

今回の舞台となったスポーツランドSUGOは、昨秋から今春にかけてピットやパドックの施設を中心に大改修を行った。コースも一部の舗装が新しくなり、ピット出口のレイアウトも変更となった。

大会前日の金曜日。佐藤蓮はサーキットに着くと、相方の高木真一や岡島慎太郎エンジニアらとともにコースウォークに向かった。

「どのコーナーにどれくらいのバンクがついているのか、縁石がどのようになっているのか……コースが改修されてから歩いていなかったので、念入りに確認しました。実際に歩くと、乗っている時とはコースの見え方がまた違ってくるので、新しい発見もありますからね」

各コーナーの縁石をひとつひとつ入念に確認していた佐藤蓮。高木真一と意見を出し合いながら、SUGOの攻略法を作り上げていった。

予選Q1はまさかのトラブル! なんとか切り抜けるも、ポールポジションに届かず

迎えた大会初日。朝の公式練習では2番手タイムを記録するなど、上々な滑り出しをみせた55号車。午後の公式予選も上位進出が期待されたが、予選Q1ではまさかの事態が起きた。

高木真一がマシンに乗り込み、ピットを後にしたのだが、そこで電気系のトラブルが発生。すぐにピットに戻って対処することとなった。

残り5分10秒のところで再びコースインを果たしたが、タイヤのウォームアップを考えると、かなり厳しい状況。最後のラップでタイムアタックに入るものの、途中区間まではQ2通過タイムよりも遅れていた。

しかし、右に大きく回り込む最終コーナーで一気にタイムを詰めた高木真一は1分18秒576で4番手通過に食い込み、見事Q2へ進出した。

それをピットで見ていた佐藤蓮。「ヒヤヒヤしましたね。(ピットアウトが)あと1分遅かったら、Q2には行けていなかったかもしれません」と、Q2進出が決まった瞬間はチームスタッフと喜んでいた。

ポールポジションをかけたQ2は佐藤蓮の出番。気合十分でタイムアタックに臨むも、今回はライバルの方が一枚上手だった。結果は1分18秒149で5番手。土屋圭市エグゼクティブアドバイザーも「BoPのことを考えれば、上出来!」と佐藤蓮の走りを讃えていたが、当の本人は悔しさを隠しきれない様子だった。

「ポールポジションを目指していたんですけど、ドライビングもミスとかはありませんでした。普通にタイムアタックを決めて、あの順位だったので……落ち込みましたね」

「ただ、ブリヂストンタイヤを履いているマシンの中では一番前ですし、ロングランの感触も悪くないです。決勝では優勝も視野に入れて戦えると思います。前回15台抜いたことを考えると、チャンスはあると考えています」

前回の鈴鹿大会から確実に走りが変わりつつある佐藤蓮。自身が参戦しているスーパーフォーミュラ・ライツでも8月下旬に行われたツインリンクもてぎのレースで3連勝を記録する快進撃をみせ、周りからも“今乗れているドライバーのひとり”と注目度が上がっている。

それだけに、決勝に向けた期待感は徐々に高まっていった。

ライバルをあと一歩まで追い詰めるも……

迎えた日曜日の決勝レース。暦上は9月に入ったものの、まだまだ暑いが続く。この日も気温29度、路面温度46度でレースが始まった。

5番手からスタートした55号車ARTA NSX GT3は高木真一がスタートドライバーを担当。追い抜きが難しいと言われているスポーツランドSUGOのコースで、高木真一は序盤から積極的な走りをみせ、次々と前のマシンをオーバーテイク。3周目に3番手に浮上すると、21周目に18号車ホンダNSX GT3の1台を抜いて2番手に躍り出た。

そして、35周目にピットインし、佐藤蓮に交代。55号車の今季初優勝の命運は彼に託された。さらにトップを走る61号車スバルBRZがピットストップを終えた直後に、コース上でトラブル車両が発生し、セーフティカーが導入。これで61号車と55号車の間隔は一気に縮まった。

レースが再開されると、佐藤はライバル攻略にかかるが、前に出ることはできず。その後も食らいつこうと必死に走ったが、その差は少しずつ離れていった。

結果的に、トップから11.4秒遅れで2位フィニッシュ。55号車としては今シーズン最上位ではあるのだが、マシンを降りてきた佐藤蓮に笑顔はなかった。

「勝つつもりだったんですけど……。後半使ったタイヤが思ったように機能してくれなくて、特に(燃料が)重い状態の時にペースを上げられませんでした」

「レース後半になって軽くなってきたときにペースが同じくらいになったんですけど、その時には10秒くらい離れていたので……。2位という結果はポジティブですけど、ちょっと課題の残る結果にはなったのかなと思います」

そう語った佐藤蓮。目の前まで迫っていた勝利に届かなかった悔しさが込み上げてきている様子だったが、次に向けてチームとデータの見直しを行っていた。

次こそ初勝利を掴むだめに……佐藤蓮の挑戦はまだまだ続く。

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