今季、8号車のトラックエンジニアとなったのは、ライアン・ディングルさん。
GT500クラスの経験もありますが、彼にとってはメーカー、タイヤメーカーも移籍しての一年目となりました。チャレンジングな一年となった訳ですが、今季はポールポジションも優勝も獲得と、存分に力を発揮してくれました。最終戦も…とその前にプチエピソードについて触れておきましょう。
われわれは第7戦で勝利し、シーズンの最後の最後でタイトル争いに加わるなど、今季、尻上がりに調子を上げ、ドライバーと共にチーム力を上げて行きました。それに貢献したのが彼でもあります。今季ようやく初勝利を遂げた第7戦後は、まだ小さなお子様たちに優勝とご自身のお誕生日を祝ってもらったそうです。これが一番の原動力にかもしれません。
そして、最終戦の直前、夏に仕事でサーキットに行く際にテレビ番組の取材を受けその模様がオンエアされました。スーパーGTというモータースポーツ、我が鈴木亜久里監督率いるARTAの事を世の中に知らしめることに一役買ってくれました。
カナダ出身でカナダのご友人たちは、レースの仕事も知ってくださっているようで、海外ではYouTubeで無料配信されているスーパーGTを見てくれているようです。また学生時代のイギリスのご友人たちは、レースの仕事の事は、ご存じなかったようでこれを機に見てくれるということになったそうです。
そんな彼が迎えた最終戦。逆転タイトルの可能性が出てきたものの、予選では8番手とタイトルには若干遠いグリッド…。しかし、諦める訳にはいきません。予選アタックを終えクルマがピットに戻ると、すぐさまドライバーとエンジニア軍団で話し合い、決勝はタイヤ無交換しかないという結論に至りました。もちろん、チームでそれを判断し実行する訳にはいきません。われわれが履いているタイヤはブリヂストン!そうです、タイヤメーカーの許可をもらう必要があるんです。もちろんタイヤの状況も確認しなくてはいけません。
ブリヂストン様からタイヤ無交換の実施の許可が出ると、FPで使用したタイヤの走行距離を伸ばして、タイヤの摩耗や構造を確認しました。もちろん、イケる!という最終的な判断に至りました。朝も、無交換を想定しピットクルーたちは練習を重ねていました。
決勝が始まると迷うことなく無交換で行くしかない!という姿勢。スタートドライバーとなった野尻がタイヤを温存しますが、それによりトップからは離れてしまいました。しかし、その温存する走りがなければ走り切れない可能性もあったというエンジニア。温存したという野尻のタイムは悪くなく、福住にステアリングを託します。福住もオーバーテイクするなどし結果5位というリザルトをもたらしました。ランキングは昨年の10位より躍進の5位で終了。
今季を総括すると、「同じタイヤを履くホンダ勢に負けたのは悔しかったです…。シーズン前半は良い結果を残す機会を得たのに、それが出来なかった。しかし、シーズン後半の4戦で一番ポイントを獲れたクルマなので、このままの流れで来年に向け頑張りたいです。もちろんタイトルを狙っていきます!」と力強い言葉をくれました。日本語がとても上手なYOUと共に迎える8号車の来シーズン、ぜひ!ARTAにご期待ください!